コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

アンブレラは黒く、赤く

がちがち、バラバラ 8-6

いないか、まだ店内にいるのかもしれない。 次に発車する送迎バスの時刻をバス停で確かめ、車に引き返した。 種田は、どの出口からでも出て行けるように駐車場内をぐるぐる周回、車へ熊田は手を振った。 今度は正面の右手に停車、この角度であれば入り口はば…

がちがち、バラバラ 8-5

「開店直後には店に入ってました。何度かトイレには立ちましたけど」「座る場所は決まった席ですか?」「うーんどうだろうか、窓側には座りたいと思ってますかね。けど、いつもあいてますからね、窓側。夏ですし紫外線とか気にするのは女性が多いですし、あ…

がちがち、バラバラ 8-4

また証言とは一致しない。同日の同時刻、三神の隣の席に座っていた人物、女性にも熊田たちは話を聞いていた。ここへ来る前のことである。ちょうど種田が聞きこんでる際にこの女性が自ら名乗り出てくれたのだ、私も事件のときここにいて現場を目撃したのだと…

がちがち、バラバラ 8-3

「エザキマニンというカフェをご存知ですね、あなたが良く利用している喫茶店です」「それがなにか?」「カフェが隣接する通りで少女が亡くなった時、あなたはその店にいましたね」「死んだんですか?可哀想に」三神はキーボードから手を離し、上蓋を閉める…

がちがち、バラバラ 8-2

不毛な会話を繰り広げて熊田と種田は指定された場所へ移動した。O署からは約二時間のドライブ、運転手の熊田は珍しく高速を利用し目的地周辺で一般道へ下り、郊外のショッピングモールへ車を止めた。屋外は強い日差しにより暖かく感じたが、風が吹くと冷た…

がちがち、バラバラ 8-1

「カフェの店員の証言は、事件時に常連客が窓際の席に座っていた、とのことです」助手席の種田は抱えていた質問をぶつけた。「管轄外の捜査はもう手を引いたほうが賢明だと思います」「署に帰って電話番をしているのか?」気温が上がる車内、クーラーは停止…

がちがち、バラバラ 7-7

刑事たちの対応の迅速さに舌を巻いた。見る間に責任者が血相を変えて姿を見せ、事のあらましを刑事から聞いている。太りすぎの体に手放せないタオル、サスペンダーのやさしさに甘える張り出した腹部を抱える責任者。鑑識の捜査に早急に取り掛かるべきだ。既…

がちがち、バラバラ 7-6

「宅間さん?」「ああ、ええ。この子です」「少女と会話はされました?」熊田が写真をしまいながらきいた。「はい」「どのような?具体的に覚えてることでけっこうです」「ペンキのような塗料、赤い塗料を撒きました。SOSの文字をそこに書いて、お前は生…

がちがち、バラバラ 7-5

交代してから二時間後、夕方の気配が空を赤く染めて、明かりが乏しくなったときに、二人の刑事が尋ねてきた。ちょうど一台の車を下ろしているときで、その二人も預けた車が目的なのだろうと、宅間は思っていた。しかし、手元に駐車券の控えがない。いつも利…

がちがち、バラバラ 7-4

「ご自身の判断に従うのが最善の選択、と僕は解釈します。あなたではありませんから」突き放す言い方でも縋りたい。「夢を見ました」宅間は中腰、テーブルに両手を着く。「わかりません。私が見た場面かそれともただの創造なのか、昨日の夢に少女の姿を見て…

がちがち、バラバラ 7-3

宅間は一口目を運んで熱々のマカロニを舌で転がす。はふはふ、空気を入れて熱を冷まして喉に押し込んだ。早く食べてくれと店主は言っていたが、はたしてその要求に応えられるか心配なってきた。 取っ掛かりに苦労した宅間は、快調に食べる速度を速める。端末…

がちがち、バラバラ 7-2

「お店って、やってますか?」宅間が聞いた。頭上では鈴が鳴り終わる。短い出迎え、ドアを途中で止めているからか。がらんとした店内を窺っていると、奥から先ほど話した店員が出てくる。「すみません。今日は夜からの営業のみとなっておりまして、ああ、先…

がちがち、バラバラ 6-8

「具体的に店を離れた時間はどの程度です?」熊田が煙を吐いてきいた。「時間にするとそうですね、順番が回るまで待っていたので五分、いや十分ぐらいだとは思います。防犯カメラになら映っているでしょうね、ATMの」「地下ですか?」「いいえ、店内です…

がちがち、バラバラ 6-7

「……場所を変えましょうか。ちょっと出てくる、十一時にはもどるわ」見習いの男に告げて、仕儀は刑事二人とたまに利用するカフェへ移動した。お客は一人、小気味いいタッチでキーボードを打っている。その隣に私たちは座る。窓際の席。「先ほどは失礼しまし…

がちがち、バラバラ 6-6

「水鉄砲が見当たらない、それはつまり少女が持っていなかったのではありませんか。私は見たものは水鉄砲のではなかった」「液体を貯めておける形状の所持品は発見されてないのです」残念そうに力なく熊田は応える。「警察は少女がもともと持っていなかった…

がちがち、バラバラ 6-5

「あっ、来ましたよ」見習いが言ったそばからドアが無造作に開かれた。二人の刑事がまた登場した。慌しい朝である。「おはようごさいます」男の刑事、熊田が率先して言う。「お時間をいただきたい」「唐突ですね」仕儀は笑う。開店時間直後に予約したお客は…

がちがち、バラバラ 6-4

「残念だけれど、あなたの指名の多くは少なくとも憧れが土台なのよ、あなたは気がつかないかもしれないけど、カットされるお客の顔を輝いた瞳をあなたは見ていないのでしょうね」もう一人の従業員の女性が出勤。男の視線が仕儀の背後の動きを感知して仕儀へ…

がちがち、バラバラ 6-3

鏡越しに出勤してきた従業員へ挨拶。店に戻り、今日の予約をチェックする。若手の見習いが表を掃き終え、戻りしなわざとらしく声を上げた。「なに、どうしたの?」仕儀は受付の予約画面を見つめたまま言う。若手の見習いは男で、バレリーナのように首が長い…

がちがち、バラバラ 6-2

だんだんと着せられていった。それを私は甘んじて受け入れ、私を殺した。あの少女はたぶん許された。赴くままに自我を押し通した。目立ちすぎたから標的にされたのでは。一瞬、「自業自得」、内なる声が奥底から届いた。流行の服を着ていた彼女は見せたい衝…

がちがち、バラバラ 6-1

通勤の地下鉄。夏でも朝でも晴れでも地下鉄の明かりは後発の路線では深部のホームに近づくにつれてその威力をまざまざと見せ付ける。運良く席に座れた。仕儀真佐子は隣にちょこんと座る制服姿の少女を盗み見た。彼女は、端末を操作、画面はパズルゲームのよ…

がちがち、バラバラ 5-20

シートに包まれた少女が担架で運ばれていく。かぎつけたカメラマンのフラッシュが頭上からたかれた。ビルの二階、落下防止用の窓のわずかな隙間からカメラと手首を差し出して撮影していた。殺された人間にならばカメラの撮影は無神経、しかし、有名人の葬式…

がちがち、バラバラ 5-19

「わかりました。ご要望にはできる限りの配慮をほどこします」 「受け入れて良いのですか?」種田は冷たい目で熊田の受け入れに文句をつける。熊田は両目を軽く閉じて肩をすくめた。警察の間ではかなりポピュラーな表現手段らしい。 「ああ」熊田は一言そう…

がちがち、バラバラ 5-18

「店の裏手は頻繁に行き来する場所ではないと思われますが、いかがでしょうか?」 店主が話す。「ほとんど行きません。ゴミは店内で補完しています」 「被害者の顔に見覚えは?」従業員は皆首を横に振る。店主は種田に見つめられてから否定した。 「所持品の…

がちがち、バラバラ 5-17

「カウンターの灰皿をお使いください」 「ありがとう」カウンター、ドアに近い席に座り、足を組んで神はおいしそうに煙を吸う。「額に銃創を見止めた。その他、外傷なし。綺麗なものんだ。服の乱れ、汚れ、破損もない。寝かされた時に接地した面が汚れている…

がちがち、バラバラ 5-16

「人それぞれで反応は違います。警察は私たちよりも見慣れているから言えることで、もしも急に人が倒れていたら驚いたり、助けようと方法を迷ったりするのが普通。近くにたまたま警察がいたとしても、気が動転して頭が回るとは思えません」気の強い館山が国…

がちがち、バラバラ 5-15

もう一人の刑事が店に入ったところで、種田はその刑事に伝えるように聴取した内容を反復した。「国見さんが外の様子を見に行き、裏手で死体を見つけた。そして、店に戻り事情を伝え、次に小川さんとあなたが、死体を発見。そしてさらに、小川さんに呼ばれた…

がちがち、バラバラ 5-14

館山に警官が付き添い、離れる足音が鳴った。 「あんたが見つけたのかい?」白髪の鑑識が問う。 「店の従業員です、見つけたのは」口元にしわを寄せて鑑識の男性が立ち上がる。意外と身長が高いとわかる。僕自身の感覚も死体を見つけて麻痺してたらしい、と…

がちがち、バラバラ 5-13

数秒間、店主を穴が開くように見つめて、館山は瞬きを数回繰り返すと本来の機敏さを取り戻し、一度壁のもたれる少女を見てから、こくりとうなずき隙間に消えた。 一分も経たない間に空間がさらに狭く感じる。制服警官が一名と鑑識の人間も一人だ。制服は警官…

がちがち、バラバラ 5-12

目に飛び込んだのは、足をテディベアのように広げ、座る女の子である。事件の子供と同年代、嫌な予感が過ぎるがもう遅い。おそらくはとうに通り越して、僕の予想と小川のそれは確定。口元を両手で覆う小川を少女が見えない位置まで下がらせる。泣いているの…

がちがち、バラバラ 5-11

「朝から具合が悪かったの?」店主はきいた。もちろん、従業員の健康管理は僕の役目である。朝には必ず顔色と吹き出物の有無、隈や声の質などをチェックする。問題はなかったように思うが、彼女の様態の変化は明らかに体調不良を見抜けなかった僕の判断ミス…