コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

4 ~小説は大人の読み物~

 

「入院先に押しかける?面会は許されてるとは思えません、それに個室だと入るのはやっかいです」
「厄介だが、入らずにおめおめと立ち去ることは選択肢には据えてない、お前以外の三人はな」
「熊田さんと相田さんはいいとして、種田もそうだって言うの?」
「面会謝絶となれば、胡散臭い訪問客の遮断に適する。その包囲網をかいくぐってでも病室や病院内をかぎまわる、手がかりや入室に繋がる手引きなどを探し回る人物は院内の職員の誰かの目に留まる。買収をされ、情報を職員が流すかもしれません、病室を教えるぐらいで小銭が手に入る、とても魅惑的な誘いに数名は乗っかるでしょうね。ただ、その場合、内部への侵入は患者やそれを見舞う訪問者として、寝巻きや花束に差し入れの果物などなど、適した小道具・衣装に身を包む。病室内の行き来であるなら、つまり病院内で入院患者に化けるとそれほど怪しまれずに目的の病室へ訪問の前段階、病室を横切ることは可能でしょうね」
「お前、トランクからパジャマを引き出しておけよ」
「また僕ばっかり変装させるつもりですか、お断りします。相田さんの貸したおかげでゴムが伸びきってるんですよ。備え付けのバスローブじゃひらひらして気持ち悪いから僕のを貸してあげたんでしょうが、何でそうすぐに人の親切を忘れられるんだか」
「入出は困難が予想されます。廊下に張り付く、光らせる二つ以上の瞳がにらみを利かせるでしょうから。なにしろ、空港から直接T大学病院に運ばれた、病状の深刻さを渡航先では伏せていたようですね。医療費の問題も懸案事項だった、保険制度を有しないと莫大な請求書に痛い目を見る、機内で不可抗力で取得した映画の情報ですから、現在の社会事情との整合性はおまかせします。ようするに、諸所、抱えた事情からすると帰国後に待ち受けた取り調べは予定外。痛みを緩和させる麻酔や痛み止めは市販の薬局で購入したのでしょう、医療大国では鎮静剤は購入可能であると、これも真偽は委ねます」
 車内の捜査懐疑を思しき雑談を交える一行は鈴木が軽快に場を繋ぎ、一路次の訪問先T大学病院を訪れた。
 一階ロビーの受け付けに直接T大学病院の事務長を呼び出した。警視庁の名前を借りた、ややこしい説明を熊田が省いたのだ。
 種田たちは、飛んで現れたカーディガン姿の事務長に案内を受ける。
 歩きながらエレベータまでに、該当者の病室を聞き出した。許可は不本意、事務長は滞在時間の短縮を約束させることで面会を許す。
 エレベーターのドアがやつれた事務長を切り離した。
 個室が並ぶ病棟は、ホテルの思わせるフロア。突き当たりは恥ずかしがってラウンド、お尻を隠す。
 ドアの前に警戒心をにじませる人物が居所を教えていた。
 彼らが飛び掛る前に、熊田が近づき、動きながら手帳を取り出す。手術は三十分前に終わったところでそろそろ目が覚める。
 事務長の読みは的中。いや、事前に仕入れた情報を私たちに伝えたのだろう。
 室内に断って入る、山本西條はベッドで身を起こしていた。腹に乗せた右手に白い包帯が巻かれていた。
「警察の者です。空港で散々話されてうんざりしているとは思いますが、私どもの質問にも協力を願えれば、と思います」
「機内で見かけたのか……、そっちのきみ、あの飛行機に乗ってなかった?」力の抜けた声、熱にやられたときに振り絞る音声。アイラは答える。
「はい、搭乗してました」
「まさか、私の目的とかぶって……いないわよね?」
「はい」
 山本西條ははにかむ。
 息を漏らし、その姿はまるで虐げられた下女だ。
「刑事が四人、聞きそびれた死体の謎を私が隠す、口を裂き裂きやって来た。やって来た、やってきた」と、おかしな言動を口走る。
「時間がありません、手短に答えてください」芝居は熊田がばっさり切る。種田よりも冷酷な処置だった。「アメリカ行きのツアーに参加したあなたは、機内で死体を見た、とmiyakoさんに伝えた。間違いありませんか?」
 嗄れ声を今度は用いる。「喫煙の事実は……漏らしてもいいけど、できれば黙っていて」彼女は片目をつぶる、どのような意味だろうか。「見ちゃったのは実を言うと、ぼくではないのよ。別の人から聞いたの。がっかりしたわね。ぼくを逮捕してお終い、当てが外れた、当てが外れた」
「まだなにも言っていません。それで、別の方から聞いたというのは?」あくまで熊田は一過した人物像を貫く。ベッドを四人が取り囲むのは圧迫感を与える、これを鈴木と相田は心得ている。個室の応接セットに二人は向かい合って座る。ドアのまん前に種田が、ベッドと種田の中間にポケットに片手を入れる熊田、という配置だ。上着の裾が開く。熊田はスーツの下にベストを着込む、はじめて見た、熊田が衣服にお金を使う人物という印象は新しい情報である。いいや、その検討自体がこれまで整合性に満たない対象だった、種田は瑣末な考えにとらわれる。
「交換条件の交換」山本西條は歌うように声を放つ。「最初の交換はmiyakoとの交換、見つかった死体のことを話した。正しくは、彼女の前にトイレに入って近づいて彼女がアクションを起こすよう、ぼくが仕向けたの」