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追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 3 駐車場

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「鈴木と相田は待機」
「ようやく眠れる」
「もう、また留守番ですか、僕ら」
「休息は必要だ」
「それ、熊田さんの言葉じゃないですかぁ」
「頼んだ」
「もう、僕タバコ吸いますからね」
「誰に断ってんだよ」
「僕にですよ」
「車回してきます。相田さん、キーを」
「熊田さんは助手席ですか?」
「女性の運転と男性のそれと大差はない。デートや旅行、遠出であってでも目的地に向かう行為にはなんら影響を与えない。それに種田はもうペーパードライバーは卒業した、運転を任せられる」
 待ちわびた時間に裏切られる、これが刑事の宿命、刑事たるゆえん、仕事の大半を対象物の捕獲と捕捉、それ似付きまとう切っても切れない待機に費やす。
 正午前の十一時台後半に種田たちO署の四名は一時間ほど食事と種田を除く三名の喫煙ととりわけ彼らの活動を支える栄養源をたっぷり吸引し店を出た。それから喫茶店から先週鈴木が止めたコインパーキングへ車両を移し、このようにスタジオで会議を開くという場面である。
 一階に下りて戻る前、出前の蕎麦を啜るエンジニアのキクラによれば、この時間で戻らないときは、夕方前に顔を出すかマネージャーを通じて連絡を入れる、とのこと。アイラ・クズミは不在だった。差し支えなければ、熊田は丁寧にも恭しく頭を下げる。連絡を受けたときにこちらにも一報を伝えて欲しい、と手間を頼んだ。種田たち部下にとってはかなり意外な行動に受け取れる。なぜなら、それまではあまり捜査に積極的な態度には思えなかったことと、特に熊田は事件を紐解く鍵に見当をつけているよう種田の予測が働いていたからである、彼は無駄な動きとは一線を画す。狙いは……いや、そうまでしてアイラ・クズミに会いたいと願うのは鈴木の心象だろう、熊田に限ってそれは、そのようなことは……あってはならない、違うな、あるばずがないのだ。
 スタジオの待機組鈴木、相田と別れた種田は熊田を助手席に次の訪問相手、miyakoの仕事先に向かった。いつ捜査権が警視庁に渡ろうと彼女たちの主張が上層部を通じて理解される場面は、絵空事のように信じ難く、事前通告などはっきり言えば存在しない、私たちへの通達・伝達の時点では既に解散が決定した事後報告が大半である。よって、行動は大胆とならざるを得ず、「死体」というワードをハイグレードエコノミーと客室乗務員以外にも捜査範囲を広げ、乗客たちが死体出現のほぼ同時刻の別フロアにて嘘か真かの信憑性を抜きにしても余りある不可思議な光景をだ、miyakoをはじめ、山本西條、君村ありさが「死体」を口にできしまう偶然は彼女たちが関係者足りうるであろう高い可能性を秘めているとしか思えない、いや、思い込みたいのだ種田たちは。それを排除した暁に種田たちに待ち受ける仕打ちを知りすぎるほど、心得ている。なぜならば、彼女たちの職務体型は、オファーと知らされない期限内での解決が必須の使命であるから。
「聴取に疑問点があるとは思えません」種田が訊いた。ナビが忙しなく次の角を曲がりなさい、レーンを早めに変えろ、急きたてる。これでは音声のみのガイドで事足りるのではないのだろうか、道を知らないのだから、アクセス、衛星に頼るのだ。