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追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 7

放送中止の訴えは結局、終了まで聞き入れられなかった。三月いっぱいを契約満期とするも、事実上数週間前には次に控えた新車との兼ね合いで宣伝を休む。押しかけた彼らは契約違反を強く訴える、放送そのものを即刻電波から引き下げろ、と穏やかとは対極のブース外のにらみ合い、怒鳴り散らす人間模様の最たる感情の高ぶりがガラス越しに繰り広げられた、ブースドアに内鍵が取り付けてあったことも放送をまっとうできた要因だろう。山本西條が登場するCMはテレビ放映もされていたらしい、そちらは放映を打ち切れたようだ、ヘッドホンを通じて雑音を交えた鼻息をより分けてようやく聞き取れたのが、放送終了を告げる別れ際の挨拶あたりであった。
 目くじらを立てて止めるほど車に関する発言が種田の正確な記憶によると、一箇所の引っかかりも見当たらなかった。ラジオを元に次に買い換える車を算定するとは到底思えない思いにくい光景に思うのだが。
 アイラ・クズミはいまだに所在が知れず、鈴木たちが接触に失敗、引き続き待機を、という熊田の指示を伝えた。失態を詫びる鈴木の声だった、だが声を変えようとも過去の出来事であり、現実的な対処を考えるべきであって、その点次の行動プランを考え述べたので、何一つとして私が異論と忠告に似た意見をぶつけることもありはしないのだ。
 ゲストの立場であるから、種田たちは邪魔者扱いに等しい射殺す視線を受けて逃げるようブースを後にした。
 そそくさと逃げ帰る二人は、次に君村ありさの元へ向かった、そこは鈴木たちの待機場所であるレコーディングスタジオである。
 待機組みをロビーに残し、三階を訪問した。
 しかし、君村ありさは昼食に出た、とのことで、もうすぐ戻る、聞き覚えるのあるフレーズを同じ人物から聞かされた。アイラ・クズミ専属かと思いきやビル内のスタジオが彼の仕事場なのだそうだ、スタジオを借り受ける、これをオファー主つまり歌手たちに託し、自らは渡り歩く。遊牧民といってしかるべきだろうか。
「あれれ、れれれ、早いですね。まさかぁ……」飛び上がる、着地。ロビーの鈴木が立ち上がる。まるで貸切、受付は言わずもがな、人の気配は途絶えたままだった。どこか人がいてはいけない意志をそこには感じた。
「このあたりの飲食店を当たってみる」二人に言い渡す熊田。「君村ありさが戻ってきたら、お前たちに聴取を頼む」
「アイラさんのほうは?重なってしまいますよ」
「体は二つある、いくぞ」
 飲食店を手当たりしだい回る、当てがあるのか、闇雲に対象者を探す熊田はどこか投げやりなようにも種田には映った。