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追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 8

「僕らのことを避けてました?」
「避ける行為はこちらに、避けてしまえるのはあなた。あなたからすると、私に避けられたのでしょうね」
「つまりですよ、今のお話を聞くとですね、君村ありさは機長が何者かにより殺され死体となって荷物棚から転がり落ちた。機長の役を演じ、アイラさんたちと航続の協議を重ねた人物は副操縦士である」
「ロビーに僕らの姿が見えたはずでしょうよ、見逃したんですよね、僕じゃなくって刑事の僕らに挨拶は交わしたもん、そうですよ、うんうん」
「お前は口をふさげ……いいから椅子に座ってろよ、立つなよ」
「タバコを吸っても?」
「どうぞ、我々も吸いますから」
「ロビーだけ分煙じゃないんですね」
「私が理由を知ってるとでも?」
「おうい」
「はっ、今から黙ります」
 クライアントが入所する高層ビルを、一人戻った。カワニは事務所に立ちよる用事を思い出し、最寄り駅でタクシーを捕まえる彼と別れる、アイラ・クズミは電車に乗ってスタジオに舞い戻る。ロビーで二人の刑事に呼び止めに遭い軽い拘束、身に降りかかった演奏後のフロアの模様を包み隠さずにその事実を告げたところである。
「見間違えか、それとも見落とし、あるいは思い込みか……」相田という刑事は首を捻る。張り出した腹は見事に前かがみの体を支える。バランスが取れている。「出来すぎです。アメリカ当局から送られた検死報告の写真を見ました、死体ですよ」
「死体を貨物室に移した時ですよ、相田さん」鈴木が誓いを破った。睨まれて、取り出したタバコをくわえる、記憶を刺激する香りだ。
「着陸後機体の動きが止まる、私たちは乗り込んだ警官たちにその場の待機を言い渡された、客室乗務員も同様です。エコノミーのお客を先に降させた、死体の搬出を見られたくなかったのでしょう、私たちへの許可は三十分以上経過していた」
「死体の身元が機長か誰なのかは別として、副操縦士が機長に成りすましていることを受け入れても、操縦席はひとつ余ります」と、相田が訴える。仕事をさせてもらえない、邪魔だ、問いかけに二人は余計な人員、刑事の肘は隣の待機を言い渡した相手をぐりぐりと硬質な対表面の膨らみと一線を画す先端を向ける。アイラはとりあえず質問者に向けて答えた。