コンテナガレージ

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犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2

仲良くテーブルを囲う早朝のビジネスホテル、朝食にありつく。
 航空会社jafは機長及び副操縦士の個人情報の提供を拒んだ。この二週間は地道に彼らの周辺捜索に費やされた。両名は体調不良を理由に帰国後の勤務はすべてキャンセル、疑いが強まった。糸口はいたずらに捜査の方針を揺るがし翻弄する。機長は三日前に容態が急変し、息を引き取った。死を挟み、副操縦士はさらに固く口を閉ざした。証人保護の申請も伝えたが、効果のほどは薄く反応も鈍い。病院内で仮に機長は殺害されたのであれば、自らもいつかはと、想像は膨らむ。警察の助けを跳ね除けた要因にハイグレードエコノミーフロアで死体が見つかるフライト前の接触がおぼろげながら予想された。ちなみに、種田たちは二週間、部署を空け続ける。今のところ出動命令は下っていないとのこと、情報処理班の人間から熊田は近況を仕入れる、上層部から部署に下る指令は一度はその前に情報処理班を通る。
「怪しい乗客に見覚えはありませんか、もう一度よく思い出しましょうよ」ビジネスマンでごった返す食堂、喧騒は怪しげな事件を口にしても誰一人見向きどころか、時間と栄養の補給と新聞に端末を睨みつけた情報の取得に必至だ。鈴木は種田たちを見回した。朝を苦手とする鈴木だったと思う、種田はコーヒーと珍しくオムレツを口に運ぶ。
「あの歌姫、俺たちが搭乗してたことを知ってて無視を続けるのかねぇ」正面の相田は選び取る和食の組み合わせ、一汁三菜を掻き込む。納豆の粘性が声に現れているようだ。このペースだと、二膳目のお代わりは固い。
「あの、じゃなくて、アイラ・クズミさんで、す、よっ」鈴木は出汁巻き卵の最後の一切れを相田から奪う。
「ばっか、お前」
「麦価?ビールの消費が落ち込んでるみふあいいですね、そもそも高価格だったという事実を素直に認めればいいのに」確かに寡占気味の市場は搾り取れる利潤に見せかけの価格を競っていた可能性は高い。囲い込んだ資本をベースに似た事業への展開、得られた剰余は生産性を高める資本に投入。国内に漂う消費の停滞に通貨が大量に投下されたと聞く、風のうわさ、生きてるだけで聞こえしまう雑談。
 価格は目一杯だ、
 高級感を謳う種類に目先を変えた、高くても、というのは売り文句、価格の高さを「高価格帯」がもやをかけた。
 低価格に走ったらしい、
 パフォーマンスに過ぎない、また、いずれは、という目論見だろう。
 販売店を持つ商店が自社製品の販売に乗り出した、加えてクラフトビールの台頭。これは捜査後の食事の席で鈴木と相田の注文品がきっかけで情報を得た。今日を以って捨て去る情報だろう。
「大きくなって後に引けない、どこでも一緒だな」
「相田さんも大きくなって、ですね」
「お前、今日も運転手だ」
「昨日も一昨日もで、今日もって。断固として反対します!」
「私が運転しよう。道はこの中で一番知ってる」熊田が斜めにスライスされたバナナを剥く、朝食を摂る習慣は種田と同様に備えていないはずだ。
「だったらお前は後ろだ」
「大きい相田さんじゃあ、隣の種田が可愛そうですもんね、へへん」
「いってろ」
「ほれは、ほうと」サラダを頬張ってしゃべりる鈴木。「機内で君村ありさが死体のことを追及したとき、僕らは出て行って事情を聞けましたよ」
「謹慎処分の身分で部署内の全員が揃いも揃って海外旅行、現地では確実に引止めを食らう、何のために日本を離れたんだよ、後悔しか想像できないね」と、相田。隣の席が入れ替わる。時刻は朝の七時前。