コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 2~無料で読める投稿小説~

トン、判が押される。
「定期公演のライブハウスの設備等に起因した利用不可」
 あの三名以外、特に十和田を含むエコノミーフロアの乗客にかかる疑いを私たちは捨て切れてはいない、
 そこを突くのか、
 やめろ、
 聞かせろ、
 この人は犯人の特定を言い渡すつもりだ。
 まだ掬い忘れた関係性、発言、事象、態度があってたまるものか。
 種田は奥歯をきしませる。
 部長が間を詰める。「代わりの会場を探せただろうに」
「大小に関わらず会場はすべて埋まっていた」
「ツアー出発は別日、当初の公演日を避けるのであれば、会場は押さえられたと思うね」
「意図的な力を感じとった。公演の数日前に同様のアクシデントを警戒し、対策を講じた」
「では、飛行機を選んだのは?」
「不動の渡航スケジュールを逆手に取った」
「機体がよく空いてたもんだ」
「ツアーがひとつ、定員割れを起こした。これも仕組んだ、とでも言いがかりをつけたいのですか?」今度は手のひらで叩く。
 書類が薄い、デスクと同化に取り掛かる。完遂まで時間がない。取り逃がすわけには……、ここで真相を聞きだす、逃せば最後、機会は一度きりだ。
「ライバルの低迷は当人にとって有益か害悪か、この問いはどこへ帰結をみるのか。彼女たちの活動の場は同一のカテゴリーに属するだろう、ファン層の違いはあっても曲を聴き、購入し、会場に足を運ぶ性質が確認できる。何しろ、音の存続が危ぶまれる昨今だ。貴重な資源だと、彼女らからは見えている。すると、なかでも戦略に裏打ちされた能力の個人、あるいは個人を括る集団が奪い合いを逃れ独占に成功を見出すようになる。当初の共に業界を盛り上げる思惑に反しライバルは手の届かない存在、目の上のたんこぶになってしまった。甘く見ていた己を省みず自らの持ち駒を数えることなく、策の組み合わせ如何を試そうともしない、いっそのことライバルが突如として空けた地位であるならば、そっくりそのまま空席に居座れるのでは、まったく浅はかで幼稚な考えにたどり着く。騙される者は少数ながら応援はを続け、数ヶ月から数年は息を永らえる。が、所詮は真似事であり、方策を練る手段が身についていない、打ち出す活動は徐々に化けの皮をはがす、メッキは剥がれ落ちる。つまり」部長は開いたドアの遮蔽と取っ手を握る人物の引き返しを言い渡す、事務員は目を白黒させ引き下がった。追い出される、これは予想外だった彼女。部長は続ける。「三人ともに動機を持ちうる対象には違いはない。ライブハウスの使用中止は幾重にも人を介す形跡が残っていたはずだ。けれど、たどり着かない。誰の仕業か、ようするに正体が知られてはならないのだよ。加えて、その人物は近しい者か面識の有無を問わず関わりを持つ者の二つに分かれる」
「業界の人間ならば、アイラ・クズミに嫉妬を抱く人物は大勢、大半に相当しますが」種田はいった。
「全体で潰したのかもしれない」
「それでは機内で死体が見つかる道理に合いません。彼女たち三人と探偵の十和田は依然として有力な容疑者に変わりはないはずです」
 あとわずか。
「なんと言った?」
「彼女らは有力な容疑者」
「違う、その前」トン、押された判、押した判。
「……機内で見つかる道理」
「見落としは証言に隠れるのでもなければ、彼女らの動機や背後関係、搭乗前の行動などは見当違い」部長はコーヒーの残りを喉を鳴らして飲み干す、吸音。「機内で死体が見つかる、これ自体が不可解な現象の一部を含む全体を言い表しているのだよ。わからないかね、地上では効力が薄れてしまう、上空の密室だからこそ選ばれた。ライブハウスの楽屋で死体が発見されたとしても、お客には無関係であり迷惑は運営側の落ち度だ。開演前か、一回目の公演終了後に突如死体を目の当たりにアイラ・クズミという人間がその事実のためにお客の優先順位を下げはしない。彼女の気質は非情に明確で律儀でさえある。よって、彼女の性質が発揮されつつ、その行為自体が賛否に分かれるアンバランスな地帯が選ばれ、上空が採用された。実のところ、死体云々の計略はお粗末にあえてほころびを見せる、黒幕の計算だろうかね。これで終わりだ。肩がこる、肩がこる」