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論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 3~無料で読める投稿小説~

カワニはしっかり内容物を流し込む。「警視庁の事件担当の刑事さん、種田さんでしか、その人から情報がありました」
 アイラ・クズミの所属事務所プリテンスは情報提供を条件に警察と取引を行っていた、彼女の指示である。警察がどこまで事件に関与しどこまでこちらの要望、情報を食い止める労力を買って出るか、探りを入れた、との事務所の見方も可能だ。事件や犯人に対して時間を裂いて謎に取り掛かるほどの魅力には欠ける。自らに降りかかる火の粉の大きさについての興味が、正確なアイラの心理描写だろう。
 彼女はカワニの分のコーヒーを立ち上がって用意する。視線を合わせ、止めに入ろうとする彼の腰を再びソファへ戻す。ついでにこのときを利用して口を開けとも、付け加えた。無論、無言の指示である。
「miyakoさん、山本西條さん、君村ありささん、この三人は死体の人物と一緒のところを写真に取られてます。週刊誌のカメラマンです。しかも驚くことに、このスタジオビルに入る瞬間ですよ、三人とも」
「業界の人間ですか?」アイラがきいた。コーヒーを彼に手渡す。アイラは立ったままである。
「……圧力がかかってます」カワニは側頭部を掻く。片目に皺がよる。「一応君村さんに話を聞いてみようとしたら、ついさっきですけど、えらい剣幕で追い出されましたよ。喫煙室の数人だって、首を振るだけで何にも言わないんです。うんと、違うな、言おうとはしてるけど、言えない事情がある、というんでしょうか、伝わるでしょうか僕のニュアンス」
「彼女たちが"死体"に関わる側面よりも、"死体"に彼女たちが関わっていてはそもそも困るのです。業界に顔の利く人物その人か、関係者、家族、親類なのでしょうね、死体の身元は。調べを拒むそれらの働きかけは、逆に死体がこの業界の人物であることの示してしまった」
「ふーん」カワニは鼻息を力強く漏らす。
 アイラは言い切らずに浮遊する残りの情報を促した、今度も当然無言である。
「ええっとですね、ちょっと待ってくださいよ、覚え切れないんでメモを取ってるんです、ははは」以前、覚えられないことを私が指摘した、それに対する弁解だろうか、アイラはじっと彼の動作を見守る。
 警察なりに犯人を導き出したのだろう、音沙汰がない刑事たちと、カワニが騒ぎ立てない二点が理由だ。カワニが口を開く。
「あった。ははぁあ、そうかそうか見落としてなぁ」
「なんです?」
 首を前に鳥のように押して引く、狭い稼動域。「三人のデビュー曲の作詞作曲を担当、ですって。薄墨みたいな繋がりをどうにか見出した、刑事さんたちの苦労が窺えますねぇ。作詞も担当してると専門性が際立って一人歩きがはじまれば、仕事は舞い込むし、もう発注はひっきりなしでしょう」
 カワニの考えは彼のものだ。肯定も否定も避けた、繋がりのみを取り出す。