コンテナガレージ

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論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 3~無料で読める投稿小説~

「搭乗前、空港の喫煙室で彼女たちに私は会いました、声をかけられた、その時が仕掛けの始まりだった」アイラはエンジニアの椅子に浅く腰をかけた、言葉を吐く。「振り返ると、私たちの渡米を耳に入れる一段階前に行動予測は立てていたとの見方が可能です。決定後の搭乗スケジュールは不変ですし、出発予定日に空けたチャーター便は意図的な作用が働く、これは拭いきれません。一日ずらした出発日、そう当日の別便か前日あるいは翌日の用意も整えていた大掛かりな仕掛けだった。つまり、搭乗日の前後数日を空き便に変えられる力が働いた、搭乗日の決定は左右されたのではなくて、私たちのスケジュールに合わせた空き便の選択であった」
「それはまた、想像もつかないスケール……。あっと、言っておきますけどね、僕は漏らしたりしてませんから」思い当たる行動があるのだろう、カワニは長方形の焼き菓子を口に二枚詰め込んだ。彼は取り繕うのに必至、メモに食らいつく。「ほうです、山本西條さんが右手を痛めていたんですよ」
「死体を下ろした際に痛めたのではないのか」アイラはあっさりという。
「ええーっ。それも先回りですかぁ。かなり話題をさらうトピックだと思ったんですけどね」
「消灯後、機内のフロアで彼女は姿を見せた。私は直接その手を見たのです、予測ではありません」
「仕切りのカーテンを堂々と突破して移った……まさか。お客さんからのクレームを僕は受けてませんよ」彼はアイラの表情を窺う。「それってですよ、誰も気がついていなかったのでしょうか。……うーん、一人ぐらいは怪しい行動を観察してるように思います、ほら熱狂的というか入れ込むお客は多いですから」
「トイレに立つのも億劫であった」アイラは広汎に告げた。「記憶では窓側の席に彼女は座る、どなたかと席を交換しない限り、隣の人物に移動を悟られる危険は免れない。買収をしたのかもしれません、自らの正体を明かし、同業者であるアピールと何かしらの見返り、ピックやサインなどの戦利品を持ち帰る、だから移動は黙認して欲しい。ファンの一人、私を敬愛するライバルとは異なる、買収を持ちかけるお客は敵対心を抱かずに送り出した、とこのような予測は立ちますかね」
「そうか、あの時はまだ僕らもあの二人がお客にまぎれてるとは思いもしませんでした。うん?それなら、アイラさん、いつ気がついたんです、変装に?」
 人は都合よく過去を忘れる。「私は事前に空港の喫煙室で面会を果たした」
「おっとっと、そうだった」
 着衣を手がかりに私は彼女たちを探り当てたのだろうか。記憶は確かだ。該当する窓際の席、二人は同列と左右窓側に座っていた。フード、帽子をかぶった二名。
 映像がゆがんだ。
 何がいけない、何を見落としているというのだ。
 本意との乖離。私が構築した映像、記憶とでもいうのか。
 隈なくカメラを過去へ、機内の一地点に据え置く私の視覚を再現する。
 一定のノイズ、機内の微振動が改めて知覚に引きあがった。乗客は気にも留めない。もたらされる効用が薄める。
 両端の二人が点滅を開始した。警戒の色が強まった。注意深く、変化に気を留めろ。
 画面を二分割。
 映像を見返す。
 空港、喫煙室の服装との一致を試みる。
 見えているのは上半身、主に肩から上だ。お客の顔をはっきりと見させてはくれない。miyakoはつばの広い帽子の上からパーカーのフードかぶる、喫煙室とは不一致。めがねをかける、これはサングラスに代わった。山本西條の特徴的なコートとサングラスはどちらも機内では取り外された、過ごしやすい服装に着替えたのかもしれない。正体を隠す、平たくこちらもつばの広い帽子だ、到着地が拠点のプロスポーツ球団のイニシャル。
 見させられていたか。
 いいや、これが日常だ。何もかもあらゆる事象とその要因は前段階の生成に係わりを持つ。何しろ、私たちがここにいられる、これもまた仕組まれた何者かの策略の賜物なのだ、私が証拠品と証明そのものを担う。