コンテナガレージ

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論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 3~無料で読める投稿小説~

一人納得したアイラはコーヒーを、そして目の前のうすべったい薄茶色の栄養を口へ運んだ。
「僕らのところへ移れたとしても」カワニが確かめるように呟く、視線はテーブルの何もない天板に落ちる。「演奏前の、死体を見つける明るい時間帯の出入りにはやっぱりクレームは付き物ですよ。お客さんだって一言アイラさんと言葉を交わすことは夢見てた、一人が許されるなら、私もって、客室乗務員にお願いをした人だっていたでしょう」
「彼女の犯行は不可能だが、認めざるをえない、そう聞こえます」
「刑事さんたちのニュアンスだと、腑に落ちない様子、いや口調でしたからね」カワニの口腔内は休む暇がない。線で描かれた笑みを刻む丸い形が次の獲物。二口で消える。「シークレットゲストで歌った野外ライブのちょうどあの時に、新たな被害者を救出したそうなんです。犯人を特定したきっかけは被害者の証言が元になっていてです、犯人はしっかり顔を見られていた、確証があったのでしょう、見つからない過信が足を踏み外した」
「停電は意図的に仕組まれた」
「違いますって。停電が起きたから、被害者を倉庫から探し当てられたんです」
「いいえ」アイラはきっぱりと否定をした。「犯人の狙いは停電と演奏の中止です。シークレットゲストの登場、つまり私に対する嫌がらせ、演奏をさせたくはない、そのような心理。と同時に死体が会場内で発見される。発見の手順も踏んでいたのです。しかし、私が演奏を始めてしまった。詰め掛けたお客は私の登場を知らされていない、後日、あの時のゲストはアイラ・クズミで、会場で死体が見つかった。そういえば、アイラ・クズミには飛行機内でトラブルに巻き込まれた。噂が立つ。あれはもしかすると真実ではないのか、そうやってもう一人の被害者の登場により、私への疑いを噂の範囲内から詮索へと欲望の昇華を狙う。時節に任せ、時折あらぬ噂を流せば、暇な人物たちが事実無根のそれらしい過去を勝手に作り上げてくれる。ええ、じりじりと私の体力奪う策略だったのです」
「アイラ、ひとつ仕事を頼まれてくれない?」エンジニアのキクラが手招きした。ドアの隙間を人はよく利用する。
 カワニの、追加で寄せられる質問が予測されたので、いい機会である。アイラは内容も聞かず、二つ返事でスタジオを出た、。カップをひとつ、手に抱えて。久しぶりに上階に上がる。
 外はそろそろ暮れようとしていた、エレベーターを待つ合間を移り変わる色とのコンタクトに費やす。
 エレベーターを待つ時間に考えるべき課題を設定しよう。時間を有効利用できるだろう。積み重ねるこの短い時間もいつかは一時間となり、一日、一週間、十日、一ヶ月となるのだ。