コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 6~無料で読める投稿小説~

タイアップの曲はそこその売り上げを伸ばしているらしい、受注生産の形式を取ったタイアップ曲のCDは注文数に応じた工場の稼動が三回目の生産工程を次に控えているそうだ。加えて、車の生産は月間販売台数の一位を獲得したとのこと。問い合わせの件数から想像するに来月、再来月も全車種部門総合のトップが期待される。
 そうした功績に配慮したのだろう、先日私宛に車が一台送られた。送り返す手間を言い訳に事務所はうまく利用した、事務所所有の移動車への転用を決めたらしい、社員が社長を説得したとかしないとか。数少ない車移動はタクシー・レンタカーで行うため、維持管理費は高くつく。私よりもカワニたち事務所の面々が隔絶された空間に所属歌手の身をおいておきたい、安心を得て他の仕事に取り組みたい、彼女は願望を拾い上げた。

 随分と世間に甘くなった、彼女は自己を分析する。
 寝かせた曲をスタジオ内に流した。

 アイラは大胆に曲の終盤を先頭に移す。曲は時間を空けて確かめる、焦ることは禁物だ、と彼女は考える。期日はしっかりと守り、製作にはゆとりを持つ。怠けている様子をたびたび指摘される、喫煙室での場面。なぜ毎日、睡眠時間を削って仕事に費やさなかったのか、進言は喉にしまう。あえてこちらから敵を作ることもないだろう、うん、やはり鈍っているんのだ。

 機内における、降りかかった出来事を思い返した、きしむ背もたれが相槌を打つ。
 彼女たちは価値を売り出そうと必至だった。私に頼った、手段を選ばずに。
 価値を私なりに告げた。本に書かれた内容は正しい解釈であったのか、意見とは原始による。仕方のないこと、私も頼らなくては生まれてすらいられなかった。
 何に巻かれるのか、究極は囚われる価値の選択である。
 死体は私の価値を低める狙いだったが、攻勢に転じられるとは思いもよらなかったらしい。二重三重の仕掛けを組んでいたら、会見では抑えきずにいただろう。曲の製作は後回しされていたか。

 それでも良かった。死体と私が切っても切れない縁で結ばれたとして、離れるのは一過性のファンに過ぎない。そもそもが狭い領域に向けた曲の提供である。広がりはいずれ収束に流れ出る。
 見誤るな思い上がるな、思い返せ、思い煩え、思い定めよ。
 新しいものばかりを探すな、とはっきり伝えれば良かったか、他人事で機会を失う、創造性に長けた貴重な早朝だというのに、引っかかりをまずは取り除け、ということかもしれない。
 頃合を見計らってコーヒーを注ぐ。最近、コーヒーショップのテイクアウトを止めた。店員に声をかけられたのだ。価値とは、そっとしておかれることも含まれる。これで店員は学んだだろうか。いや、馴れ馴れしい態度を悔やみ続ける、というパターンもなくはない。 
 コーヒーをテーブルに放置、冷ます。
 ソファに寝転んだ。
 棒状の体を作る。
 私は死体。
 思考をトレースしてみた、無意味だと割り切っての無駄。たまに道を逸れるのも悪くはない、私ほど日常に勤勉であればあるほど。
 闇。
 身動きの取れない圧死の恐怖に苛まれる、孤独でひどく心地の良い、それでいてすぐに出たくもある多面的な雰囲気がひしめく空間。生と死を連想する、交互に訪れる。
 そう、棺桶。
 生命は尽きているが、まだ人としての尊厳は周囲が保つ。焼かれ、あるいは土に埋められ、形を変え、姿を一同から覆い隠すと、死が牛耳る。
 ……あの人は私に見られたかったのかもしれない。アイラはいつの間にか閉じた瞼を勢い良く引き上げた。パイプオルガンに似た壁のグラデーションが錯覚を起こす。近いようで、遠く、耳障りであり、どこか惹かれる。
 死を選ぶ権利を、私はまっとうできるだろうか、アイラは額に腕を乗せて考える。私は誰かに見られたい、と思えるのだろうか。