コンテナガレージ

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「性格をまとめましょうか。疲れます」
「まったく。一体に一人って誰が決めたんだか」
「いつも、あなたは怒る。疲れるでしょうね」
「あなたの前でだけよ。他のお客さんには美しい私を見せ付けているの、知ってて?」
「いえ、僕が来るときはいつも空いてますから」
「殺したの?」
「そうくるのか。いえ、僕ではない」
「誰だか言ってよ?」
「そういえば地獄耳でしたね」
「挑発でしょう、乗りませんよ」
「僕ではなくて、ぼくである。これがヒント、というか正解です」
「不誠実」
「これでもかなり譲歩したつもりです、伝わらないのかな、感情が通っていない、よく言われたものです」
「ふーん」
「急いでます」
「ふーん」
「切ってもらえますか、髪の毛」
「最後にもう一回聞くわ。それであきらめてあげる。さて、バリカンを取り出すとするか」
「刈り上げてとは、一言も」
「冗談を理解してるくせに慌てちゃってさ。めがね取りなさいよ、切れないでしょ」
「かけてませんよ」
「色眼鏡よ」
「虫眼鏡なら必要かも」
「ミクロの私を見て綺麗さを再認識したいのね」
「照明の明かりも集めたら熱を帯びるんだろうか、やりませんでした子供の頃」
「そうね、数年前のことよ」
「外、雨が降ってます」
「ええ、髪質が教えてくれてる」
「眠ります」
「おいこら」
「お客への態度とは思えません、非道だ」
「人払いをさせておいて、その言い草、私はいつもそれでも頼まれてしまうんだわさ」
「どこの言葉ですか?そうです、忘れてました」
「なになに?」
「おやすみなさい」
「コンセントまでコードは延びるかしら」
「バリカンはしまいましょう」
「伸びたな」
「切りましょうか、そろそろ」