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ただただ呆然、つぎつぎ唖然 4

「制限時間の五分に質問の回答時間は含まれるのかどうか、これは質問です」彼女はきいた。
「一回使用した、とカウントしますが。よろしくて?」メイドが聞き返す。キクラ・ミツキは無言で頷く。「含みます」
 不思議だ、気持ちが落ち着いてる、煽りが余白に思えた。晒した素顔を目当てにメイドの女性の動きに鈍さが増す。見つけた、捉えた私の本心目掛けた蛇のような捕獲の眼差し。物理的に制限時間内に執事を見つけ出せることは万に一つの偶然、それに質問を設けたことがどうも引っかかる。私の足元を見てくれたおかげで、考える余裕は生まれても、うーん、限られた二つの質問。ゲーム。そう、思いつく回転の速さがあの人に近づく用件だろうか、彼女は疑問にぶつかった。カチカチ、メイドの女性は蟹股で秒針のリズムをきっちり刻む。質問に全員が真実に基づいて答えてくれるのかもはっきりと明示されないし……、わからないことだらけだ。
 もう四分を切った、不正確な私のカウントだ。ただし、気持ち早めに刻むから心配は無用。一つ一つ、問題を片付ける。次はっと、彼女は質問内容と回答時間の両者に正解を見出したい。しかも、執事一人に絞り込んで、ふう、だめだまったく頭が働かない。こんなときだから、腰を痛めないように軽快で陽気に手拍子を求めるメイドのスカートが悲しそうに舞った。
 私自身、人との会話も数えるほど、片手で収まる。もちろん、兜をはずしたときのこと。兜、かぶと、カブト……確信と確証の煙が漂ってるぞ、彼女は左手のカウント、十の位を折り曲げる右手を切り離す。一極集中に切り替えるんだ。おぼろげなかぶとのキーワードを引き寄せ、つかみ、歯を立てて噛み砕き、むしゃむしゃ。味わって、目をぐるりと回す。
 解像度の低い映像が流れ始めた。昔の磁気テープの映像みたい。この部屋に入ってきた私、四方をさまよう視線で酔いが回りそう、縦横の平衡感覚を再生機にも搭載したらいいのに。執事だ、彼が迫る、いや私が近づいたんだった。画面の右上に時刻が表示されてる、午後一時三十一分0二秒、朝食とセットの昼ごはんを食べ忘れてる、そろそろエネルギーが切れる時間帯。はあ、この愚鈍な私の半分は燃料の不足が原因である、聞かれた公言しよう。おいコラ、しっかりしろ、あの人が最優先でしょうに。叱咤激励、お尻を叩いて彼女は映像を見入る。時計は刻々、秒針はカチカチ、胃袋はぐうぐう。
 恋愛要綱第七箇条……、あれを守る境遇は既にくぐり抜けた?いいや、だって破ったのなら即刻退出を命じられるだろうし。要するにだ、彼女は探る。質問の数、戒律、三兄弟に共通する落とし所のようなポイントがある、あるだろう、あれよ、あるさ、あれあれ。
 だいたい二分を切った。もう時間はない。質問、質問って戒律と兄弟に関して、それとなんだっけ、思い出せ、ついさっきまで丁寧に抱えていた、ああ、あれだ兜、カブト、かぶと……。