コンテナガレージ

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白い封筒とカラフルな便箋

 アルバムはデビューした昨年の、年間売り上げの二位にランクインをしたことで、契約は延長に継ぐ延長、年末の各音楽番組、雑誌・ラジオ、その他歌手活動に無関係な仕事まで舞い込むものだから、レーベル兼事務所・プリテンスは複数年の契約を結んだ。

彼女は条件を提示していた。彼らはほとほと困り果てたようだったが、途方にくれる様子は微塵も見せなかった。そういったレーベル権事務所側の心象とは裏腹に、アイラはメディア等の取材の受付を拒む、との方針を言ってのけた。彼女は、新人にはおあつらえ向きな宣伝に駆り出されることを、拒んだ。まったくもってちやほやされることを毛嫌い、眼中にすらないのだ。しぶしぶ首を縦に倒したレーベルは、その条件を呑み、契約が結ばれたという。アイラも、譲歩はした。互いの関係性を保つ上で、今後の展開を見越すには、彼らにも余裕を持たせてあげないと。そう、手綱を緩めたのだ。

 エレベーターに乗り込んだ。ワインレッドの内装はいつにも増して渋みを帯びたように見える。

 二階。突き当たりの観葉植物目掛けて、接触の三歩手前でくるりとつま先を左に向ける。見慣れたブース。

 力を込めた両手で、がちゃりと分厚いドアを開けた。