コンテナガレージ

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白い封筒とカラフルな便箋

力を込めた両手で、分厚いドアを開けた。

 ここは凛と、張り詰めている。

表情が一定だ。吹き抜けの天井に、這うような壁の木目、一階ロビーの真上に位置する利点が特殊な室内に、空間を作れたか。

 ブースの番号をいつも忘れる。その場を訪れたら、呼びかけるだけで振り向く。

  わたしのまわりでは、名前が重要らしい。名前を覚えていないだけで怒って帰える人がいる。所詮はその程度、瑣末な自己欺瞞が後日噴出する予定だった。

 私の仕事はなにか。自らに問いかければ、言葉は消えるだろうに。

  名前は呼ばない。対象の機能や仕組み、価値に用途をしっかり吟味してやっと名称を呼ぶ気になる。仕事に必要な人物の名は覚えている。私が曲を吹き込むには、私の利に適った人物でなくては。私の要望を満たすミュージシャンにも限りがあるのだ。巧みな弾き手は業界では引く手あまた。

 スケジュールが合わなければ、私だけ賄う。諦めて、方向性を替える。不適格な人材の受け入れによって、曲に歪みが反映されるのは、もっと困るのだから。