コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

至深な深紫、実態は浅膚 4

『一発目が私でよかったのか、悩みましたよ、当然です。意外とこう見えて神経質なところがあるんですよ私にも。って、会ったことがないのですから、なにを言っても私の妄想にとられしまうので、前置きはこのぐらいにします。季節の、近頃の他愛もない、上辺のご機嫌伺いよりも私の心境をペンに乗せて書き連ねてしまったら、どうかしら、と思ったのですよ。日本語がおかしいですか?それはご愛嬌ということで、多少、いいえ大目に見ていただけると大変有難い次第でございます。あり難いって、在ることが難しい、つまり存在そのものに価値を有する、生きているそれだけで人としては最上なのだよ、誰かがテレビで講釈を垂れていたけれど、私には、難しいことがある、という意味だとおもうの、漢文の読み方よね。ようするに、与えられた好意なり言葉なりがその人にとっては稀な出来事だったの。私にとっては、アイラの待ちに待ったライブを観れてしまえる、これが何よりの有難さだわ。あっと、話が随分脱線して雰囲気をひしひし感じてますよ。それでは、ここらで修正しますね。ご心配なく、ここまで読み進めたのですから、もう後戻りはできません、それに私は機転が利くと昔から言われて育った三人姉妹の長女……おっと、私一人でも読み手の制止は聞こえてきますから、個人的な情報は控える決まりでしたね、守りますとも。さて、本題に入りましょう。私はウッドと名乗り、皆さんはそう呼んで下さい、本名は明かさない約束でしたので、名前は木村でも林でも森でも森山でも大林でも小林でも小森でも大森でもありませんので、しかし追及していけば、もしかすると言い当られるかも……、その遊びはまた別の機会に。ところで、ウッドとアイラ・クズミの関係性が今回のテーマでしたね、二人の関係性は世界を股に掛けたスケールの大きな問題、と私は考えます。彼女が世界のそのものではありません。彼女はあこがれの対象に手の届かない、背伸びでも、まして飛び跳ねても届きすらしない、けれど掴めてしまえる、相反する気分を振りまく矛盾を、ここはひとまず隅っこに。崇拝の対象に引きあがるアイラをして、私たちは現実の世をかろうじてしかも、誠実に生きられる術を与えられた、と想像します。現に私は彼女に見られたくはない根深いこじらせた闇をどうにか押しとどめ、噴出を抑えられた。真情の吐露、それから抑制をも超えた境地に達したの。思い当たる節が皆さんにも、そうでしょう、そうでしょう、心当たりがあると思うんです。正しくありたい、と願えるのは恋人の前でも、友達、家族の母親の前でもなくって、アイラの眼前だった』