コンテナガレージ

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本心は朧、実態は青緑 4

 選択は多すぎず少なすぎず、かつ見限れて、後悔は最小限に抑えられるか……。アイラは衣装のラックを凝視した。

 理に適った手法。三着から服を選ぶシステム……、アイラは改めてそう実感した。

 着替えた彼女は近所のコンビニで食事を購入した。コンビニは教会を出て目に付く信号を渡った対面の通り、交差点から離れる方角である。交差点を真ん中に教会とコンビニ、という位置づけ。

 アイラは店内のイートインスペースで納豆巻きとカップ焼きそばを平らげる、煙草とライター、出来立てのコーヒーをホットで買った。買い方がわからなかったので、店員に聞くと、レジの下からマジシャンの手さばきで、カップを出現させた。これには驚いた。煙草を一本、コンビニの喫煙場所で吸う。便利な食料の供給施設、それほど人の労働が切り詰められているのだろうな。衣装のせいか、滞在時間の長い視線を感じた。一本に留めるべき、直感を信じてアイラは教会に戻った。 

 一人っきりのリハーサルにアイラは取り掛かる、戻った足でそのまま壇上に上がり、ギターを構える。視界の右端、スタイリストのアキが私の洋服を畳んでいた、彼女の仕事だ。気に病むことは愚か、多少定常な間隔になびいた自分を感じて、彼女はギターを奏でる。音が綺麗、表現方法は自由だ。各自が思う音であればいい、人から余計な道を提示されないのであれば、それがいつも正解に違いはないのだから。

 そっと目を閉じた。

 そこは翌日のステージ。お客の表情を見て、曲目を決める。決め打ちはしない。

 惹きつける、無言を共有。お客が凝視。見つめ返して、恩返し。声を定めて、送り込む。すらりすらりと、わんさか、えんさか。触れて離れて届けて放置。

 照度を落して欲しい、技術スタッフへの注文が増えた。これは教会側に直接進言した方がやり取りの手間が省け、手っ取り早いだろう、どちらせよ、改善箇所が見つかった。翌日に反映させる。

 歌を切った。アイラはステージを降りる。最前列、機材の脇に端末を乗せる、音を収録したい。お客の立場。それを三度繰り返した、場所を中ほどと最後列を試した。いつものやり方、私の手法。端末の感度は最低限の機能で十分余りある、販売し、大音量で流す必要性はないのだから。確認後に消去、そして最後列も指先で画面をタッチ。

 確認画面、よほど誤操作が多いのだろう。操作性の向上について回る人為的なミス。直感がもたらした行動のキャンセル、ズボンは左右どちらの足から脱ぐのかを無意識下に任せる、これと同様の動き、応対だ。