コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

本心は朧、実態は青緑 7

土井がいそいそとドアを閉めた。カワニが振り返る、アキは発覚を恐れるような動作で端末を肩にかかるショルダーバッグにしまう。飛び出す化粧用のペンシルにコーム、櫛。彼女はヘアメイクもこなす総合的なスタイリストである。洋服のみのスタイリングも世間ではスタイリストと呼ぶらしい、アキがすべてをこなすので、誤った認識を歌手になりたての頃は抱く時期が数ヶ月続いたか、そうか、もう一年が経つんだ、アイラは感慨に耽った、自分で思う、かなりレアな心理状態である。いつもならば躊躇なく踏みつける過去だ。

 清清しい面持ちに見えたのは気のせいだった、ぶら下がる照明に映し出される不破の横顔。彼はカワニと私の前を通過、機材がはけた通常の空間に達して方向の転換を見せ付ける。続いた土井がよろめいた、上半身がつまずいたみたいに空気を掻いた彼の振り返りはご愛嬌、と受け取って欲しい、案外計算高い人物なのかも。

 土井の所業に目を伏せ、肩を竦めた不破が気を取り直してこう言った。「皆さんに残っていただいたのは他でもありません。ご存知のように、教会の駐車場で死体、それも刺殺体が見つかったことについて、何点かお聞きしたいと思い、この場を設けさせていただきました」随分と演出を加えた演技、大勢の人の前での気取った話し方は、まあ、ある程度予見される一定の反応を求めるのならば、なくはない選択、といえるか、アイラは不破へ体の向きを変えた。

 躊躇う意思は微塵も見せず、手をあげてカワニは腰を浮かせた。「人払いをさせた理由をまずは説明してください」発言は機材スタッフの退出を指している。顎に手を当てて、アイラはやり取りを見守る。左側、白の柱と壁の隙間に風が舞い込む。立てかけたギターがずれた。満員電車で避けがたい肩の共有、彼女は数センチだけケースに包むネックを寄せた。考えが浮かんだ、刑事の佇まいと私がこのツアーで求めるデータの取得及びその活用は、各々の対象物の事の起こりを明確に紐解く過程にかなり似通ったつくりを連想させた。考えすぎだろうか、さっと水をかけて彼女は脳内に浮き上がる文字を消した。