コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

本心は朧、実態は青緑 7

「最終便の出発は午後八時四十分。諦めてください」

「私たちは教会の、あそこの、出入り口にいました」

 向日が座ると、隣の楠井がバトンを受け取り、話す。

 彼女はドアを指し示す、ひかりで指輪が知れた。

「アイラさんのライブ終了は不規則です。予定表どおりの進行はありえません。私はグッズ販売場所のビルに、向日さんは教会でそれぞれ互いの状況を伝え合っていた。無線のやり取りはおそらく、カワニさんやアキさんも聞いていると思います」

 辛らつな面持ち、ここまで言わなくてはならないのか、彼女の瞳はぐっとにらみをきかせる手前で踏みとどまった。賢明な判断、踊らされて理性を失っては警察の思う壺である。

「証言はお二人の間で成立するように、受け取れますね」不破が応えた。「無線の距離を調べました。五百メートル圏内の比較的近距離の使用に適した、同時通話が可能なタイプであった。はい、楠井さんの証言は一応ですが、当てはまります。ところが、無線がもう一台用意されていたら、どうでしょうかね?つまり、スピーカーを向かい合わせに二つを一組にたとえばぐるぐる巻きに五百メートル圏内ギリギリの場所に置いたとすると、さらに移動の範囲は拡大すると思うのですよ。グッズ販売の拠点にいたであろう、楠田さん?」

「……無線機は一台しか渡されてませんよ、疑うなんてどうかしてますよ、心外です。仮にも前の会場で人が亡くなる事態に応援で駆けつけた私が、殺人?まったくもってナンセンスな発想、正直言いますけど、私はなにもしてません。疑われる行動だって、もちろん向日さんも何一つ後ろめたい言動、行動はありませんっ!」ふんと、首を逸らした。

 楠井が中央の通路を向く。

「物販に借りたビルに楠田さんがいたかどうかの確認は取れませんか?」カワニが尋ねた、可能性を口にする。意外にも力が抜けた立場での彼の発言は的を射ることが多い。彼自身はそれについては感知していない様子。

 顎を引いて不破がが言う。「ビルの防犯カメラですね?」