コンテナガレージ

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黄色は酸味、橙ときに甘味 3

 不破は諦めを思わせる両手を、上に向けた。割と腕は短いらしい。彼は上着の内ポケットを探った。手紙である。紙はビニールに内部にしまわれる。家庭用のジッパーが付いた袋よりも薄手だった。彼が手渡す。

 アイラは彼を射抜くように見つめ、それから内容に目を通した。

『入念に手紙の内容を読みたかったのに、前の人の投函が遅れたみたいでした。一人目の投稿にしては斬新だったでしょうか、あるいは前の読み手みたいに不快な思いにさせてしまったかも……。改善が許されるのですよね、あれ?私の勘違いかな?とにかく、今回は大目に見て(読んで)くれれば、次の周回で改善してみせるのであーる。ノリが軽いって、声が、聞こえてきそう。名前と年齢は伏せるようにって、言われていた規則に素直に従ったのよ。上や下に取るか、それは私の手紙を手にする人次第ってことで。そうそう、この会って何人ぐらいが所属してるのでしょうかね、前の二人は触れてなかったし、これはラビットから次の人へのお願い、というか答えてくますよね、きっと。

 書くことって案外思い浮かばないのよね、私、短文とか苦手。よくさあ、平気で文章を、どうでもいい、他愛もなく、身もふたもない報告をよくもまあ、一目にさらす気になるよねって思うの。この会と手紙は特別だよ。言っておかないと、勘違いする人は、ううんと……、いないかぁ。いるもんかっ、アイラを知ってる人たちだものね、これはこれは私の勘違いだった、反省。今まさに机に手をつきました、ポーズって大事。形によって行動は完結する一種の作用をもたらすんだって、ドクターが言ってた。おっとこれを言っちゃうと、私の職業がばれちゃうから。あぶなく、素性をバラすところ、結構聞き上手なんだから、もう困っちゃうよ。

 何?胸がむかむかするって、うーん症状は、おっとまたまた、その手には乗らないんだから。