コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

黄色は酸味、橙ときに甘味 4

 彼女たちがホテルを発った時刻は、八時。会場までは数十分。お客が数組、見えるだけで三つの塊が産業会館の敷地であると立ち入り禁止を、示す看板をバックに撮影会を早速始めている。ライブは夕方の七時である。それまでなにをして時間をつぶすのか、地元民でも隣近所の町は通過点であって、足を止めてまで散策や写真を撮る機会には恵まれない、そう、だから記念の撮影会に挑むのかも、彼らを横目にバンが施設内に入場した。スモークガラスのためアイラの顔、姿は隠れているが、観客はそれでも指をさす者が二人いた。

 裏口から入りましょう、とのカワニの提案を振り切り、昨日同様に車を降りる。歓声が上がった、まだ朝である。私は時間を示した、彼らの左隣には見上げる位置に錆付いた支柱の時計が建つ、そして口元に指を当てるジェスチャー、呼びかけは静まったものの今度は手を振られた。振り返してもらえなければ、その手の行き場と彼らはどう取り合うのだろうか。手は出した。だけれど、眩しかった差し込む太陽を遮ったのだ、そう言い訳を作り上げたアイラである。

 機材のチェックとは、名ばかり。ギターと予備の一本を今日の室内に馴染ませたら、仕事は完遂したも同然。声は上々。関係者の一団へアイラの一喝が広まったのだろう、手土産を携え、私にサインを求める連中は一人として現れなかった。

 会場にトイレは完備されておらず、隣の併設館に移動しなくてはならない、アイラはドアを引く。

 一階、屋外は柱と柱が遮る視界が存在を見せ付けて、海沿いのトンネルの思わせる。

 階段を下りてトイレに立ったのが、昼の一時を廻った時刻で、観客の数は早朝の数倍に膨れ上がっていたけれども、階段を下りるアイラは毛糸の帽子に手袋を填めた姿で、彼らの判断に困る姿、じっと見つめる視線は呼びかけよりも雄弁に語る。さすがに帰り道は、何かと騒がれた、間違ってもいいと、一人が判断を下したんだろう。きっかけをつかめたら、他は追従するのか、徒党というやつだ。

 敷地内にテニスコートがある、深緑の色合いは真新しいものだろう、白線の擦り切れは見られなかった、一人では練習はできない、上達には人の助けが必要。相手を負かすための競技なのに、なんだか本末転倒。コートに見切りをつけて、階段を上った。

 ああ、そうか、アイラは意味を読み取る。