コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

黄色は酸味、橙ときに甘味 4

 試合が練習、という解釈だ。自分のためなら試合には出ないし、コートにだって立つ意味を見出せなくなるはずだ。

 観客の入場開始前に、トイレにもう一度立った。今度は裏から廻るルートを取る。入り口の階段はお客が立ち並んでいたから仕方がない。現在は使われていない建物、これぐらいの不便さは隣接する会館のトイレが使えるだけでも幸運だろう。

 コンビニで取り込んだ山間部の画像と重なる、多少勾配の坂を上り、気温の変化もあったことで葉の色は赤と黄色の勢力が緑に勝っていた。どこも山と海沿いと坂道は似ているらしい、手を冷やさないようアイラは雪の結晶を模した手袋を填める、コンビニで買い求めた商品、どこで買おうと品質にそれほど違いを感じたことがあっただろうか、彼女は言い聞かせて、飛び出しかけた反論を黙殺した。デザインが可愛いから、ではその価値観に適うものがもしもコンビニで手に入るとしても、購入に踏み切らないだろうね、と何度か仕事関係の人物、特に着飾った女性に言ってのけた過去がふくらみ、マンホールへそれらを再度滑り落す、何度でも這い上がってくるのだ。

 冷気特有の香りが鼻をつく。花の香りよりも山々の緑の青さよりも、海の潮風よりも、私は冷凍を思わせる麗質で無機質なこの匂いに惹かれる。生まれが北国だからか、雪かきの苦労と顔に張り付く横殴りの吹雪さえ許容できれば、それこそ中途半端な秋を季節から除外して、申し分ない。反論は一切認めないつもり、だってこれは私の想像なのだし。

 カワニが慌てて、緑色、青銅のドアを飛び出して、私を見つけた。心配性である。帰りが遅かったから、……子供だ、という認識がまだ彼には根強いらしい。

 お客は入り始めたようだ。言葉にならない声が反響、そして残響と混じり、互いに踏みつけ、引き伸ばす。天井の無機質な風合いに得体の知れない動物が潜んでいそうだった、隣のカワニも釣られて首を傾けた。私は彼の動きと合わせるよう、天井に見切りをつける。

 無言を貫き通すお客にとっては、苦痛かもしれない、私と似通った性質、要は必要なときにだけ喋る人物だったら、この状況でも自らの維持に務められるというもの。