コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

黄色は酸味、橙ときに甘味 4

 柱に沿って、客席とアイラ、スタッフの空間を仕切る黒幕が約三メートルの視界を遮る。朝は柱と柱はがらがらに開きっぱなしであった。午後は午後で配線のトラブルに見舞われて、ばたばた、復旧に奔走していたんだ、いつの間に、私が気に止めていなかっただけか、たぶん照明と日の傾きに黒幕がするりと館内のもぐりこんだのだろう、要らない詮索はここまでに彼女は観客の気配を気取りつつ、ぶーらぶら、てくてく後ろ手に開演を待った。

 衣装はトイレに経つ前に着用、ベンチコートの下はグレーのTシャツに黒のジャケット、靴は保温性の高いムートンブーツ。

 館内を流れるBGMが徐々にフェイドアウト、バトンをつなぐ観客のどよめき、続いてコールの波が沸き起こる。そして、静謐なときを経て、機会音が完全に途切れ、歓声が再燃。

 手拍子が始まった。ちょっと早いが、これぐらいは寒さに免じて妥協してあげる。

 拝聴するがいいさ。レーベル兼事務所が冠した企業名がスタッフのバックプリントにちらひら踊る、そう、これはまねごと。経営者たちはその名のとおり、わざとうぬぼれを演じては、遊びと知りつつ、巻き込まれてくれる世界を願うのだろう……。

 スタッフからギターを受け取る。ふらっと休憩に入るみたいに自然、アイラはステージ中央に重々しく位置取った。

 

 四ブロックに分かれた人たちが、我先にと、私を見てと、待っていましたと、涙をこらえてますと、しっかりと聞かせてもらいますよ。

 一つ一つの顔を、焼き付ける。

 ペットボトルの水を含む。歓声が収まるまではいつもこうして、先週も先々週もだ、お客の高鳴りを無言で押さえつけた。これまでの公演に比べ、意気揚々な顔ぶれが揃うか、泰然自若は若干名散見される、

 その他も多数、

 さあ、始めようか、身にしみる音の時間だ、

 読み取れ、私を、ぶつけろ、お前たちを、

 試されるんだ、モルモット、酔いしれてみようではないか、

 ああ、ここが私の居場所、つきあってやる、

 二時間の長距離移動さ、心してかかれ、

 到着後の世界は異質だって言うんだ、間違いなくね。