コンテナガレージ

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黄色は酸味、橙ときに甘味 7

「自らを貶める態度は癖になると卑屈に映る。即刻、改善すべきです」

「これは、どうも。いやあ、手厳しいな、娘に言われたみたいだ」灰皿を叩く、不破は体の向きを少しばかり内向きに変えた。「アイラさん、あなたにも警備がつきます。身辺に気を配っていただくよう、警戒を強めて欲しい、次はあなたが現場で見つかるとも限りません」

「脅しですか?」

「おそらく犯行は単独、複数犯ではない。身動きが取れて、あなたへの関心が高い。熱狂的なファンからストーカーに豹変したのでしょう」

「教会の駐車場で見つかった死体の手紙はコピーでしたね、他の方の所持品は現物であった」アイラは改めてニ件目の事件を浚った。論理的な意味づけは不適当、立ち止まって次の一歩、その歩幅は毎回、ときに口にする無意識に任せている。

「ええ、不自然ですかね、やはり」と、不破。

「そうでもありませんよ。手紙は犯人が書き、ポケットやバッグに入れて立ち去った、と仮定する。これならばコピー用紙でもつじつまが合う。より慎重を喫した、二件目の犯行と言えなくもない」

「歯切れが悪い」いたずらを見つけたように不破がいう。「あなたらしくないですね。他に可能性があるとでもおっしゃるのですか、アイラさん?」

「忘れ物のチェックー」、という呼びかけが届いた。会場の撤収は早い。ステージと客席、テーブルが六つ、音響設備とカーペット、暖房器具、持ち込む機材の少なさも起因してるはずだった。しかも三箇所の設営でこの会場は二度目、手際がいいのは当たり前である。

「コピーを使用せざるを得なかった二件目は一と三件目はと異なって、不測の事態、突発的な事情が襲った」呼びかけの終焉を待つかのように、アイラが口を開いた。