コンテナガレージ

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赤が染色、変色 1

「手紙は見つかっていたのですか?」彼らはアイラにすがる、微量な可能性であっても欲しがるだろう。本心は眠っていたい、まだ体は起きていなかった。前に応えた事例を引っ張り出した彼女の返答であった。

「ポケットに入ってました、どうやら通常の紙に戻した様子ですね」二件目はコピー用紙に印刷した紙が見つかり、一と三、そして今回の四件目が直筆。

 土井が不破に確認を取る、彼からビニール袋の手紙がアイラに手渡された。読めという意味らしい、土井の目配せは行動を急かす意志がこもる、物理的な体積が一役を担っているのは確かだろう。

 見覚えのある紙だった、それもそのはず、受付で配布されるこれは、データ収集のためにアイラの発案で導入したライブの感想用の黄色いアンケート用紙である、ボールペンのインクが目立つように発注し、当初の白いコピー用紙から変更を加えたのである。びっしり、質問事項とは無関係に、大きく紙面を割く空欄に細かい字が埋め尽くす。角張った字である。裏面にも文字が連なる、不破の煙草を取り出す動きを視界の端で捉える。ここは四人がひしめく、しかも衣装が同乗する窮屈な空間だ、刑事だからといって、車外で話しににくい状況だからといって喫煙を無言で嗜む権利はないに等しい。