コンテナガレージ

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赤が染色、変色 1

「煙草を吸うのなら、外で。喫煙者の居場所が追いやられるのはあなたのような方がいるからです」アイラは言った。視線は手紙を捉えたままだ。

「これは、煙草ではありません。禁煙用のパイプです」

「随分紛らわしい所から登場しましたね」彼は煙草の箱から取り出したのだ。アイラは顔を上げた、不破の偏った笑みが迎える。

「後ろの方に、彼女に配慮したつもりですよ、これでも。この方以外は喫煙者と知ってました」

「アキさんが乗っていなければ、喫煙の許可を申し出た、そういった言い方。しかし、私の隣の荷物は衣装です。臭いがついては困ります」

「ああっと、そうでしたか」不破は額を叩く。わざとらしい。「いつもながら爪が甘い。あなたと接するとどうしても浮き足立ってしまう、何か魔法のような罠にかけられているようでね。はあ、どうにも調子が出ない」不破は言い切って、車を降りた。

 不調、それは周囲に自らのサイクルを当てはめている。独立したシステムをなぜ構築しない。それほど、この世界の表が恋しいのか。裏を見つめる刑事が?そのままだ、そのまま脳細胞を殺せばいい、少しは生存が身近に感じられる。

 アイラは目を通した手紙を土井の顔の前に差し出した。

 受け取る彼は、こちらを見つめ返した。つまり、手紙の内容を読んで、事件を解明、紐解く糸口が見つかったかどうか、もし見つかったのなら教えて欲しい、瞳に込めた意思を彼女は読み取る。

「前の方の手紙を読み、警察は私書箱に張り込みを続けていた、そちらのアプローチは経過は?聞くまでもありませんね、動きがあって、私に伝えないとは考えにくい」