コンテナガレージ

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赤が染色、変色 3

 長崎県のライブは西部の、かろうじて建物が現存する印刷工場での開催であった。近隣の住居は三世帯が暮らす集落が山の中腹入り口に建つ。事前にかつての工場が発した音は山の形状によって集落には届かなかったそうで、深夜であっても騒音の心配はない、との住民の太鼓判をもらっていた。工場は山の中腹にあり、ライブ会場当日は、手配したシャトルバスを最寄り駅から走らせるのだそうだ、もちろん定期便は往復の一便のみ、これも演出のうちである、交通費の工面は各自に任せてバスの運賃はチケットに含まない、無料にはあえてしない。事情により遅れる観客も現れるだろうが一過性のライブ、これが今回の趣旨である。

 会場の広さは、鹿児島の会場とほぼ同程度の敷地面積を有する、数年までは倉庫に使われていたとのこと。室内の暖気に関しては諦める方針を採用、アイラたちはスタンディングによる会場設営に切り替えた。お客には会場内の席の有無に関して公開は控える。鹿児島の事例は特別入場に先立ち、ランダムに割り振った座席番号に応じて席をあてがったのだ、口答で好きな数字を言ってもらう手法である。カワニの発案。自分が言った手前、諦めもつき、幸運に酔いしれもする。機転の利く対応だろうか、アイラ自身はどの席で見ようと得られる効用は同一に思える。もっとも後方の席に対しては数曲を客席中央にて歌う場を設けた。

 そういった突発的な改変を行うアイラたち一行は予定の半分を消化し、折り返しを迎える。十月第四週の移動・公演は日曜に現地に入る。当日は休暇に充て、月曜にリハーサル、翌日の火曜が本番、水曜が次のリハーサルと半日の休養、木曜に本番、金曜は大分に移動し、そのまま会場の下見に向かう。

 長崎では終日、警察が帯同するらしい。グッズTシャツの着用を彼らに義務づけた。周囲への警戒心は最小で留まっただろう、カワニの不安を取り去る効果に協力したアイラの提案だった。

 殺人は起きなかった。