コンテナガレージ

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赤が染色、変色 3

 とはいえ、理想はどうやらあったようだ。より昔に、何も知らなかったときにまで、戻ることを内面の奥深く分け入った森、乾いた葉の裏側、そのさらに下の、湿る腐葉土の深部に息を潜め、丸まった私は重たい瞼で迎えを待つか……。

 彼らに届ける場所を明確に捉えた、気がした。

 試作が証明してくれるだろう、アイラはそっと弦を掴んだ、音がぶっつり切れた、居心地の悪さ、ええ、予定調和を裏切ったのよ、私を含めた観客たちの次の期待した無意識で艶かしい音をね。

 架空の観客たちの戸惑った表情、浮かんでは消える、隣人との駆け引き、喜怒哀楽のどれかに当てはめる気概を殺してあげたんだ、戸惑って正解、それこそ私の願い、誰だって最初は正当を掲げていたいもの、最上と認めるか否かは後日改めて、今はしかし初めての経験だと思え、その証拠に想起にすら上がらないはず、決め付ける態度に傾くべからず、誰かの文言、飛び交う不安、愛していいのだろうか、ブランコに乗る背中を押した、漕ぎ出すか惰性に任せるか、飛び出すか、靴を投げ飛ばすか、それとも次に譲るかは、あなたが決めて。

 私は神ではあるものか、よくよく眺めてしまえ、ライブではまじまじとした観察を私は許す。

「音合わせ、終わりました」マイクを通じてアイラが言う。「特段、打ち合わせがなければ、ホテルに戻ります」

 あっけにとられるカワニを含む何度も私の歌を聴いた人々は普段の反応を逸脱していた、彼女にはそうみえた。