コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

赤が染色、変色 3

「吊りズボンであれば、パンプスをお勧めします。もちろん、他の二足でも過不足はありません。ですが、いつもとは違う系統の服を選ばれた事実を考慮しましたら、はい、あまりにも通常過ぎる選択は単なる奇抜に終わる可能性が高く、ゆえに判断を女性的な意味合い、性別が限定された様式美を履き、賛否を伺うことが妥当ではないかと」アキはこの服を選ぶ予感を抱いていた、だからこその整った意見。

「問題ありません。お願いします」首をひねる、アイラはカワニを呼んだ。「カワニさん、車は到着してますか、そうでなければ、タクシーを捕まえてホテルに入りたいのです」

「すいません、まだ慌しくてチェックインを行っていません。もう出る予定ですか?」彼は時計を確認する。

「建物を見学する意思を私が選択すると思いますか?私の部屋は単独ですね、既にホテルには予約を入れてあるのですか、それでは一人が先に入ると……なるほど宿泊予定の氏名やらを書き込む必要があるのですね、わかりました。喫煙室に待機してます、急ぐ必要はない、本心です、本来の予定通りに動いてくだされば結構。支度が整い次第呼びに来てください」

 リハーサル室の堅牢なドアを目指す。開いていた、開ける手間省けた。

 職員だろうか、廊下で女性と一人すれ違った、私を見つめる時間の長さで私の存在の把握が知れる、取り合わない、というよりもむしろ日常に成り下がってしまった、これが誠実な表現だろうな。足音が騒音である認識は、のめりこむ仕事場のほとんどで採用される、ここも足元は絨毯で構成が施されていた。もっさり、灰色の絨毯が圧迫面を色濃く、足跡すら消してしまっているみたいに、踏みつける感触がまったく伝わってこない、恐ろしいほどだ、反発があってこその、捕捉。ただし、潔く別れてくれる。

 一階のロビーに喫煙室を見つけた。コの字型の革張りの椅子が数脚並ぶ。金属の細長いパイプが、床と平行に細長く革の側面に張り付く。中空だろうか。