コンテナガレージ

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赤が染色、変色 8

「これでいいのかしら」、呟く。

 彼女は私に触れてくれた、だから私に色が生まれた。発色を知り、明度がもたらされた。出発はあなた。そう、結論は一つの答えに達したの。受け入れてもらえるだろうか、不安が尽きない。見えているだろうか、あの人に私が。

 手紙の書き手とはまた異なる種類の心境なんだなこれが、わからないでしょうね、あなたたちには。

 コンコン。ドアがノック。早く出ろ、自分ばかりが優先事項。

 水を流し、もう一度だけ、金属を見つめた。私が映る。あなたがいて、私が見えてる。しかも、欲したあなたがとても美しかったので、元々備わったあなたの身をこの手で抱きとめてさ、味わいたいのよね。

 笑みをたたえてドアを出る、ずらりと並んだ列。交通渋滞みたいなもの、一人の遅れがもう一人に連動するんだろう。

 ハンカチで手を拭く、水分を弾き飛ばす機械は使わない、汚れを落としたの、汚れるのよ、だから美しいあの人を取り込むの、ハンカチはそのためのアイテム、汚れていた証を視認するためには必要不可欠。

 廊下と会場入り口に差し掛かって館内に流れるBGMが足音を殺した、フェードアウト。座っていた観客たちの壁がそそり立つ。冬眠から覚めたみたいにむっくりと起き上がった。

 はじまりだ、はじまる、はじまってよ、はじまるさ。はじまるの?はじまるよ。はじまりはじまぁーりぃー。

 がやがや、かやがや、ざわざわ、さわざわ、囁きと生体音が会場内に消えてく。

 脇をすり抜ける足早の観客。うらぶれた廊下が寂しい、係員と目が合う。

 始まりますよ、顔が言っていた。

 憧れの香りが漂った。

 行こう、取り入れよう、そして私を見てよ、解けて、溶かして。始まりの色を私に移す、その前に。