コンテナガレージ

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単一な黒、内面はカラフル 2

 アナウンス、意図的に感情を殺す機械的な声が車内を包む。しかし、降りる仕度に取り掛かる乗客の姿は見られなかった。新幹線は遠距離を短時間で移動する手段、近距離ならば時間をかけた低料金を選ぶはず。

 時間と距離の関係性が気にかかった。

 アイラは音楽活動に反映できないものかと、無意識に視覚が捉えてしまう刑事たちの神妙な面持ちを空中分解、我関せずの彼女はコーヒーをしなやかに手で掴み、胸元と顎先で動きを止めてしまった。

 究極の可能性を思いつく、殺害を犯した者が次の被害者に立場を可変。証拠は見つからずに、犯人を割り出し、捕まえる警察の意義はそこで失われ、なおかつ自ら犯行を名乗り出た人物がすべての罪を被ってしまうとしたら……、包括してしまう、自白した人物が、罪を、これまでの殺人を一人で背負い込める。

 手紙を書いた人物はよりにもよって都合よく殺された、という見方も可能だ。すなわち、代理で殺された可能性である。手紙がもしも、アイラ・クズミのファンを装う場合、無関係の一般市民が私に奇怪なストーカーまがいの羨望を抱く自白した犯人によって、一人、あるいは二人、もしくはそのすべてがカモフラージュされてしまったことが予期せぬところから不意に前へ躍り出てしまう。被害者の住まいについて不破たちは言及してはいなかった。ありふれた予見される光景だったのかもしれない、または私に関する商品が見当たらなかった、ということも一部手紙の内容から辻褄が合う。アンケート用紙に書いたあれは手紙といえるのか、被害者のポケットから見つかる紙片は黄色だった。色のスペクトルを予見しつつ、自白した人物が被害者全員に手をかけたとして、第一週目のライブ後に一件目は起きたのであるから、その殺害と手紙の色を起点に犯行を思いついてもなんら不思議ではない。ただ、その場合、一件目は被害者によって書かれた正真正銘の手紙と断定が可能になるだろう。アンケート用紙の黄色は偶然の産物だったのかも。いや、黄色を軸にすっぽり一件目から自白した人物が手紙の主だった可能性は捨てきれないか。すると佐賀公演の二回に当該人物は出席を果たしてることになる。けれど、それだとコンサートホールのリハーサル室は入出は不可能だ。……チケットの転売は端末による管理体制を整えた、本人以外の人物の入場は事実上認められていない。本人確認の同意をもしも当人になりますせば、観戦は果たせる。だが、証拠を残す不手際にそれではほころびが生じかねない。当人の存命は疑わしい、といえるのか。