コンテナガレージ

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単一な黒、内面はカラフル 2

 希少な露出を誤って受け取る人が大多数、ただし、うん、観客たちは常にふるいにかけられているのは事実だ、こちらは続けるべき。

 次の仕事が待つ。東京は暖かいだろう、海洋性の温暖な気候が冬でも比較的高い気温を保ってくれる。

 大雪に見舞われる都会の風物詩、交通網の麻痺は毎年決まって見過ごされる、費用に対する通年の維持管理費と人命及び経済活動の打撃は前者の負担に軍配が上がる。 

 忘れよう、私は歌える、これで十分。仕事に遅れようとも、目的地に向う手段は残されてるのだから、悲観することはないし、手に入れる前に思い悩む必要もまた、ありはしないのだ。

 日差しがブラインドをすり抜け、明かりをたっぷりとこの身に含む。

 ほんのり瞼が赤く染まる。

 適切な距離を見出さなくては、アイラは次の遠征地のほか、歌を届ける媒体・場所の候補を調べ上げる。

 だが、ゆっくりと時間をかけて、焦りは禁物。日常のペースを保ち、活動の数パーセントをそれらの消費に充てる。

 煙草が吸いたくなった。コーヒーを飲んでいたからだろう、ここは禁煙車。通路を進めば、喫煙場所が見つかるはずだ。ギターを持っていこうか、しかし見張り役を頼むカワニたちは眠っていた。

 指摘を覚悟で、アイラはギターと共に車両を出た。コーヒーを片手に、自動的に開くドア、揺れの少ない車両、継ぎ目だって抑えたその走行音、不要な配慮に思えた。その歪みは適度に偏った思考を解きほぐしてくれていたのに、綺麗過ぎだ。もっと本心を見極めなくては、いつか、外側に食べられてしまう。内側に抱える本質を見過ごして。