目配せ。もっとも右端の私、その左斜め後方に長髪のギタリスト、ならびにもう一人ギタリストは短髪を固める、ベースのクールガイはサングラスで武装、軽く顎を引き、どんと構えるドラムスは大き目のメガネフレームを直して、スティックをくるくる回す。
カウント。ワーン、ツー、ワンー、ツー、スリー、フォ。
ストローク、力強く四割ほどを目指した音の入り、私の音に応じて、追従が広がる。動き、沈む、足の踏み出し、声の音色が手がかかり。
譜面は読み込んでいても、演奏は初の試みだ。歌詞とコードのみはカンペを作ってもらい、不確かな部分のみを抽出し、意識は演奏に注ぐ。
楽器同士の会話、海中で相手の意思を確認しているみたいだ。おぼろげで、不確か、それでも形は明確で、理解に及ぶ。
規則と知識は経験が保管し、取り出して演奏。技術は走破に取り込まれる。
流れる。いつまでも弾いていたい気分だ。
内部を開いた真実を次から次へと、彼らの柔軟な意思を渡り歩いては、私に還り、もう私でも彼らでもない、別の新しい、この場に相応しい人物が作られていく。
はじけそうになって、相手に譲り、全体が陰に潜み、場を持ち上げて、一人が突出すると、続けてもう一人が対岸へ渡って、けれど、その場には一人が留まって、必ず歓迎、待ち構える。
留まってはダメだ、絶えず形を変える、循環、似ているようでも姿が異なっていなくては。
過去を詠む歌詞、しかし顔は前を向く。
繫がりたくとも願いの成就には至らない。それでいいような気がする。