コンテナガレージ

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熊熊熊掌~ゆうゆうゆうしょう 4

 電子錠が引き起こす誤作動のわりにランプの明滅はやたらめったら長かった。もしやと、勘ぐる。休憩時間内は休憩室に留まって一歩も外に出ない、これを誓い遵守するか、屋外を選び休憩終了の直前に戻る、この二択を毎度選ぶ。午前十時近辺に集中するチェックアウトが忙しさのピーク、てんやわんやさ。けど清算と腕輪型電子錠の回収が主だった業務と言っていい、手間暇はたっぷり前日にかけ尽くしたんだ。午後四時のチェックイン開始時刻に備品のチェック、連泊客の要望を受け付け、ホテル内の掃除は業者と日常は自動ロボットが走り回るしそのほか照明や壁、天井の美化は週に一度お客様を送り出した時間帯に手の開いた一名がふらっとホテル内をぶらつき目立つ汚れを見つけ次第取り去り、手に負えない場合は早急に清掃業者を再投入する。僻地のメンテナンスサービス隊は『ひかりやかた』を運営するグループ傘下、つまり親戚筋の手を借りる。青々草木が茂る森と畑田ばかりの土地ではかなり活躍、生き物、生もの相手にする農家や林業家の評価は高くて日中外で作業をする間に家の中は手をつけられないので重宝がられるのだ。目ざとく隙間を会社も見つけたもんだよ、お客にはホテル清掃の時間帯だけ応対が難しい旨を伝えておけば、ホテルと個人宅への派遣は抵触することもなく、またホテルの急な要請は隊員の一名で汚れの対処は事足りる。(計算しつくされた汚れの発生箇所と発生までの期間を清掃業者は正確な判断基準を持つ)
 午後三時五十二分、四時半までに戻る予定が大幅な繰り上げ、多少眠れるとは思っていた算段はもろくも崩れた、予定は常に未定ということか。肩を落として地下の専用扉を通り抜ける、一見ドアとわからない形状、お客に知れないよう隠す。なんでも宿泊客の高揚を削がない工夫だってさ、まぁ支配人が切望したのかも知れない。あの人のお客以外とは淡白な応対しかできない不器用さは有名。当人もそれを承知してるからこうして僕も愚痴をこぼさずに一人黙々内部会議にかけて裁定を下すのさ、あぁ眠い。昨夜の夜勤が身に堪える。