コンテナガレージ

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鹿追う者は珈琲を見ず 8

 八月六・七・八日
 仕掛け罠、大きな落とし穴は協議の末断腸の思いで捜索を断念、捜索隊数十名(ほとんど地元の猟師)は山を下りた。皆の関心は私の三日前の所業が気に食わなかったらしく、あることないことを手当たりしだい私にぶつけました。ひどく惨めな想いでしょうに、私はへっちゃらで二度目の聴取を解放されましたの。その日は雨が降ってやみ、傘を差しては影でほくそえみ太陽の影に隠すんですから、濡れてしまえと手渡された傘は帰り道の形ばかりのバス停その朽ち果てそうな板張りの小屋に『どうぞ御自由にお持ち帰りください』日記帖の一紙を巻きつけて両手に自由を与えた。
 前の日、山に続く人の流れに私も参加の要請が下った、振り返ると私はそのとき容疑者の化けの皮をはがしてやろう、糊付けした皮膚との隙間を浮いた傍からがめくってしまうんだ、彼らの思惑を履き違えていたようでした。まだ頭はぼんやり煙が蔓延してるのでしょうか、なんとも朝方の夢現に日が昇ろうと日が落ちようと所構わずはっきりものが考えられませんでしたから、しょうがないのでしょう。山へは休みの度に登り下りの道、仮装に身を包む人たちの歩き道は足元が見えた、明るいと目印なしに歩ける、道を外れ驚かれた。天辺と麓を彼らとやってのけた。大穴、窪みへは途中の道を笹薮を分け入る先に朝と昼も夜を抱える口が出迎える。生き物が寄り付かないぞ、気配が消えた、危険な目に遇っては遅いのでしょう、嗅覚は鋭くて私たちなどとは比べるのが憚られるほど生き物の一生を穴を見落としたら、失うのです。二人の、私を追いかけた人たちの荷物が穴の縁に置かれていたそうです。よもすがら捜索は続いたとききました。
 前の日のもう一つ前。二人を見なかったか、部屋を訪ねる人たちは凄みを利かせた形相が張り付いてしまってたのです、一様に仮面を仕立てて顔を覆うのでした。自室に篭る私の生活ぶりは皆さんに問いかけて答えは聞けるはずです、私は張り付く二人が姿をくらました正確なときを訊かれようと、白や黒の方々はあなたたちも含めいくつ世の中にいらっしゃるのか、お考えください。さすれば訪問はどれほど礼節に反した態度でありましょうか。重々お考えくださいませ、そう追い返した。
 穴倉へ部屋で潰れた方も監視のお二人も行かれたのでしょう。世の人は憂いておられるのかしら、それともお似合いでしょうよ運命だったのですから、と山と生き物と私たちの関係を感じられたか。悪しき心、こちらではかまわれる、喜ばしいでしょうに。三日分を一気に書きました。覚えていられたようです、仕事ではこうはまいりません。最後の行に行き着き、これにて。〆