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兎死狐悲、亦は狐死兎泣 2-2

 手早く洗顔、歯磨きを済ませて記録を僕は確かめてた。
 時が止まった。目を疑う。息も止まっていたし、再開した呼吸で咽てもいた、痰が絡んだらしく、しばらくハンドルにすがって前かがみの体勢を続けた。それでも。瞳は画面を捉え続けた。理解し難かったし何より訪問の理由が見つからない。そういった命を危険に晒す趣味は稚拙で馬鹿のやることだと思い続けて、かなり緩和されたが今現在も自然の中で身をすり減らす行為を斜めに見る。だから海水浴、山登り、バーベキュー、キャンプ、屋外のあらゆる自然体験をことごく仮病、わがままを駆使し家族を困らせてまで自らの主張を曲げなかった。その場へたどり着き食事を摂り眠り、翌日自宅へ戻る、一連の無駄をあえて行う理由が情操教育に端を発し、自然に慣れ親しみ度胸と逞しさの強化、新鮮な空気や自然に囲まれて食べる不衛生な料理、これらがどうにも何度も正しいのだと言い聞かせてトライは重ねたんだ。けれど、反りは合わない。それらの体験学習で学べることは自宅、自室の勉強机の前でも疑似体験は想像を働かせて僕は体験ができた。したがって、矢印が察し示す山中の入り口、雄鹿山道の駐車場を理由があっても留まるなど言語道断。端末には履歴が残されていなかった事実を照らし合わせて、一人でそこへ車を走らせたことになる。時刻は深夜の一時を回って車が止まり、次の動き出したのが朝型のこの時間帯だ。
 いつ眠った?不意に質問が寄せられた。タッチパネルを使いこなす、今時差し回す旧車の開錠をやってのけたのに、二日分の記憶がごっそり飛んだのと言いくるめるつもり?誰をだ、僕をだ。僕?僕は僕を僕という人称を使っていたか、慌てて飛び出したのにキーと一緒に手帳を持ち込んでいた。これは忘れていた、に分類してよいのか……。
                                         [記述場所:ランチア・デルタHF 運転席]