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兎死狐悲、亦は狐死兎泣 3-3

 手を添え囲炉裏にはまる石に触れる。ぴったりと枠に収まる、盛り上がる、そう捉えられもする、けれど決して縁の高さを逸脱はしておらず弁えて平行に徹する。はいつくばって、顔をびたっと眼球があたるほど近づけてみた、成人男性の中で鑑識は当然としても、地面を這い蹲る、しかもスーツ姿の人種は刑事ぐらいなものだろうさ。
 つかの間だった。あっという間である。どうしてそうなったのか、わからない。多分、何時間、数日後にそれらしい解釈と解説を付け加えるのは、間違いなく僕の性質だ。日々の雑事はその日舞い込む事件に追われっぱなしで自分の細かなあれこれを思い出す、これを怠る備えた楽天家の気質と明日への持ち越しはストレスを抱える元凶そのものだから、眠りについたその時点で真っ白清潔な漂白剤に浸した白シャツに代表されるそれは、ファミレスで無謀にもミートソーススバゲッティを食す衝動に駆られた、あれよあれよと同席の皆さんのオーダーがそのときばっかり僕に再思考をさせる猶予を取り払って、いざまいらんと挑んだ結果白い皿と同様のそれはそれはオレンジの逞しい色素が数滴飛び散りました、荘厳な一皿一人食事絵巻なる物語は、一晩のいいや、一時間の睡眠で忘れられるのだから始末が悪い。引き出しのありかを、まずは見当をつけて探し当てて、それから鍵を探すんだけど、また引き出しを忘れてしまうから目印をつけておいて、これはこれではがれやすくてちょいと目を放した隙にもうこれ見よがしに多分僕の背中に向けて舌を出してるぐらい意地悪に忘我の神様を飼いならしてるんだろうから、行って帰ってくるには目印の目印を用意するのが利巧であるのさ。
 そうして鈴木は天窓から這い出す霧の忍足に取り囲まれて、意識をころりと失いました。ドアは閉まっていました。開けたとき、開く動作が求められたのであった。