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兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-4

 五枚目を手繰る。
「日記の内容(彼女は目に何らかのしょう害を抱えてる)が真実だと、二年前の目げき証言は非常に疑わしい内容に一変してしまいます。視界の欠損が事実ならばドアのすき間をのぞいていた彼女の立位置とどちらの目で見ていたかによっては、はい、あやまった内容あるいはウソの証言と断定できます。唯一つのけねん事項として、これから向かう病院ですが、ネットには照会に関する情報をまったく拾えませんでした。病院関連の評価サイトを手当たりしだいあたっては見ましたが、こちらも空振り。まあ地元みっ着の開業医院だとすれば通いの患者は余所(S市外)から訪れる人も少ないですし、それに眼科でクレームということはあまり聞かないとも想像ができます。そこで手術を行うならば、手技やじゅつ後ケアの良し悪しの数件はネットでひろえるはずです。どうです、少しは見直したでしょうか。念を押します、僕の脱走は黙っててください。Oしょの人たちにも言ってません、二人だけが共有してることをお忘れなく。そうそう、ついでに家入かい士の実家も訪ねてみます、ちょうどS市なので。忘れないようにちょうこく家の安部さんと支配人の山城さんの情報も拾えればと思います、こちらは後輩にまかせてみようかと」
 六枚目。
「今後、報告はたん末へ送りたいところですが、かん視の恐れもありますよね、『ひかりやかた』のシステムしょう害はいまだにその全ぼうはかい明されていません、念には念をということで。細かな内容は速達でお送りして、もし病室内からこっそりでんわをかけた風を装うきん急連絡をかけたときは、病室を訪ねた警察関係者から捜査に関する噂を聞いたという体でもって、それは現在明言を避けたオブラートに包む対しょうを探っているサインを示すのです。盗聴されてはいないとは思いますが、一応一芝居を打っていただけると幸いですかね。この用紙ははきしてください。フロントのファックス受信きは記録が消えるき種であることはかくにん済みなので受け取ったときに内容を盗み見ていなければ、日井田さんとぼくにだけ伝わっているのですし、またうらを返せばぼくら以外に内容を知りえたおかしな人物は簡単に見分けられることでしょう」
 最後の一枚。線、文字がより細く変わる、筆圧を掛けられない筆跡である。