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兎死狐悲、亦は狐死兎泣 12-2

 助けられたのでしょうか。見放したのでしょうか。二人に出くわしたのでしょうか。昔聞かされた物語がこの頃よく思い出されます。どれなのですか、どれであるべきなのでしょうね、どれであったら最良なのかしら。だれにとってか、それも考慮に入れるのですよね。
 日が昇ります。あれほど待ち焦がれていざ姿を見せもうあんなにすっぱり潔いのか照れ屋なのか。照明を消します。明るいのに暗い、ちぐはぐな部屋が出来上がり別れを告げましょう。引く、引っ込める、閉じる、戻す。今日からいよいよ仕事が再会します、忘れています、だからいち早く仕事先に向かおうと思います。眠いです。どうにかなります、若いのです、無理が利くのです。窓を開け放ちました、湿った風はとっくに旅立ち、後を引き継ぐ乾いた春よりも弱くけれど冷たく、しかし冬よりは暖かくだからといって夏には及ばない季節の一陣が髪を浚い室内に巻き込みました。手帳は閉じていましたので慌てて手を添えることはありませんでした。置き去りの紙袋は喜んでいましたね、久しぶりに会った友と宙空で戯れています。
 お父さん、お父さん、私は私であってよいのでしょうか。
 答えよ、応えて。
 髪は地面を目指し平常に舞い戻った。