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鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-5

 十和田へは繋がる、美弥都の端末はホテル内では不使用であり、ならば当然部屋に置きっぱなしが定常。鈴木は十和田に伝言を頼んでいた、出会うことを見越した彼にしては用意が良すぎるようにも思うが、……十和田が調べている調査のさわりを鈴木が知るのならば可能性を秘めた顔合わせを予感してもまんざら不思議ではないのか。
「二年前の死亡者と生前親しかった方たちが死因の究明、ひいては自殺の可能性を払拭してほしく要請、あなたを遠方へ呼び寄せ頼った」美弥都は言う。
「当時の新聞記事、全国・地方紙、信憑性の程度が疑われるゴシップ週刊誌も含めたとしましょう。死亡者に関する一切の個人情報が外部に漏らされなかった、隠ぺい工作が真っ先に記者たちのネットワークに広まるも見解はぶれることなく身元不明を警察は押し通した。残された半身から失われた右を補い身元の解明に役立てる、身元不明と公言した手前、広く意見を募るはずです。隠蔽を貫く警察の裏事情を記者たちは探る。が、ホテル関係者の口は堅く調べを進めるうちに明らかになったことというと、『ひかりやかた』の係員は現在働く四名から入れ替りは行われておらず、支配人を除く若い三人はホテルの開業に合わせ招集を受けた。研修期間中、関連ホテルで訓練を受けていた。記者たちは、係員の非人間的要素を研修期間に垣間見たもしくは秘密を打ち明けられた可能性を秘めた友人に目をつけるも探索は失敗に終わった。八方塞り、目処が立たない、情報が得られない、滞在費用・取材だけがかさむ、世間の関心は記者たちの諦めによって作られている。変死体と一括りにされがちなのは発見場所に特異性が見られることが大きく判断に影響を与える、水死体も落とされたか誤って落下したのかの判別は落水を見ていなければいけませんよね、溺死とは断定できる、とはいえほかの場所、つまり川の水を汲んだバスタブで溺れた人が川に流れたら、即断は遠のく」