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鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 10-1

「エキゾチックな外見を備える遠矢さんは旧土人の末裔でしょう。ホテル『ひかりやかた』に就職が内定した背景は彼女の血縁、家柄が選ばれた。選抜に伝承に精通する研究家は除外、旧土人の血を引き尚且つ生活に根ざした思想を宿す者、彼女はまさに探し求めたり理想、とホテル側の採用担当者は思ったはずです。訂正の機会は後ほど設けますのでそのときに反論を仰って下さい。彼女の過去を紐解いたのにはもちろん、私が『ひかりいろり』の開閉を訴えた理由、これの説明のためですので、誤解のないように。さて、このホテルは森を切り開き建物を建てた、しかも手をつけてはならない神聖な森、旧土人と田畑を耕す海を渡った移民の末裔、いえ両者の血を引く混血たちにも言い伝えが残る。彼女は森とホテルの中立な立場を担う。ホテルに雇われつつ森を守り、森で暮らす傍らホテルを監視する。建物と不釣合いな有り余る敷地は学者たちが荒らす調査という名の自己満足を締め出した、肉を切らせて骨を絶つ、生命そものもの森林を犠牲に歯止めを掛けざるを得なかった。『ひかりやかた』買取りを旧土人たちは許諾、目を光らせる遠矢さんを敵側のホテル内に常駐させた、ホテルに選ばれのではなかった、ホテルはえらばされていたのです。学者は敷地内を挟む自然保護区域の調査に制限が加わり、森はその分あられもない木の伐採を甘受、ホテルは不可思議な思想の従業員を雇い、遠矢さんは仕事を得る。襲われ一命を取り留めた刑事の鈴木さんとそちらの探偵十和田さんたちからもたらされた情報です、出所の追及はお二人のどちらかに、私は一切の入手に携わる関与を否定しますので」本題から意図的に逸らしている、と指摘が飛ぶ。発言は室田氏。