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鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 10-2

「さらに二年前の殺害へ話は遡ります、遠回りよりもむしろ近道でしょうか、反論は後ほど受け付けます。――押しつぶされた半身と密室が未解決のまま、室内には遠矢さんの姿が兎洞さんに見られる。死体を作り出す道具、凶器の保持以前に遠矢さんの犯行は彼女特有の植えつけられた思想によって無実が証明された。日記を許可なく拝見しました、警察に提出された証拠品です。対句修辞という技法をあなたは知らずに使う、出来事を二分割し中心の一行を境に各行が対句となる書き方が身についていた、業務日誌は特に色濃く残った。不動、そして中心に書き表すに最も相応しい出来事を対句修辞法では据える、お分かりでしょう、すなわち奇怪な死体を目の当たりにした彼女が日記に認めるならば必ず中心を、はいそうでしょうね、犯人ならばそう殺害で埋めなくてはなりません。必定ではない。実際目に飛び込む出来事を書き示すはずが室内に踏み入れた描写から始まる。彼女は無実ですよ。なぜか?対句は正確だから。彼女にとって死体の直視と比べその場に疑いがかかってもなお留まってしまったことが強烈な出来事に位置づけられた。書き表すに最も相応しい出来事を中心に据える、のですから」兎洞桃涸を日井田女史は呼ぶ、遠矢と入れ替わった。遠矢の無実を晴らしたという解釈で良いのか、あまりに軽妙な隙のない回答には粗を探したくなるのが人の性のようです。気を引き締め判断は聞き終えた後ほどにいたしましょう。