コンテナガレージ

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店長はアイス 恐怖の源1-3

お題「コーヒー」

 ポツリ、鈴木が呟く。「今日も暇だったら嫌ですね。毎朝、予定がない出勤なんて聞いたことがありません」
「暇と口すれば、忙しくなるのが常だ」熊田が言う。隣の種田は無表情でしかも背もたれに背中を接地させていない。
「ジンクスですか?」
「たんなる偶然だろう。忙しさの手前で暇と口にしただけさ。ずっと、暇なんてことはありえないしな。現に、この部署でもそれなりに事件に借り出されている」
「それはそうですけど」鈴木は納得いかないらしい。頬が膨れている。「僕らだって、与えられたいじゃないですか仕事を。誰かの取りこぼしじゃなくって」
「お前に野心が芽生えていたとは驚きだよ」相田はくくっと笑ってから言った。
「刑事ですから、上にいって自分の裁量で動きたいと思うのが妥当な姿勢だと思いますけどね。でも、種田の上司ぶりは想像ができないな」鈴木は斜向かいの種田に話を振る。彼女は常に冷静。口数も少ない。もちろん彼女は答えない、不必要だと裁定を下したのだ、熊田は思う。
「この距離で無視っていうのはどうかな?仮にも先輩だよ、僕は」
「眼中にないって」
「コーヒー返せっ」
「ケチケチ言うなって。モテないぞ、男のケチは一番モテない」
「女のケチもモテませんよ」
「女がケチだろうと、俺は興味ないね」
「じゃあ、相田さん、男が好きなんですか。はあ、それは知りませんでした。みなさあん、相田さんは実は……」
「まったく」あきれた熊田はコーヒーを持って喫煙所に移動した。廊下の突き当たり、自販機の隣である。簡易なブースから外を眺めた。
 一本目の煙草が半分の短さになるとポケットの携帯が震えた。
「はい。はい、わかりました」
 部屋へ戻る熊田がドアノブを掴んだまま部下に伝達する。「事件だ」