コンテナガレージ

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店長はアイス 恐怖の源3-2

お題「ちょっとした贅沢」

 勤め先に隣接する系列の飲食店では、オーガニックの食材にこだわった料理を提供する。私自身、料理には無頓着でオーガニック食材の判別を食べているお客が一口一口確かめ舌で味わい、感じ取っているのかどうか疑問を感じていたぐらいで、食べ物への興味はまるでなかった。
 ある日、昼食時に隣の店を訪れてご飯を食べてみたのだ。これがおいしくて、感動を覚えた私である。人前での食事はこれをきっかけにできるようになった。大げさなことのように思うが、おそらくストレスで考えすぎていたのだろう、と思いをめぐらせた彼女である。
 今日はめぼしい店をピックアップし、軽自動車で店に向かう。国道を東に走る。昨日ほどではないけど、抜けるような空の青さはまだまだ健在だ、良かった、ホッと胸をなでおろす。休日の雨は嫌いだ、気分まで落ち込んでしまう。最近洗車を怠っていて、ワイパーとボンネットの境目がうっすら茶色に汚れていた。車には詳しくはない私は、車を購入してから車は洗っていない。ウォッシャー液が切れたときもディーラーに駆け込んで対処してもらった。当然、説明された内容は覚えていないし、理解ができなかった。彼女にとって車はアクセルとブレーキで進む、止まる、たんなる移動手段そのものだ。車内の綺麗さもは休日にしか運転しないために保たれている。
 目印は壁のフェニックスの文字。小道を挟んだ隣にはレモン色の建物が見えた。ロープで土地の周りを囲った駐車場に車を止める。隣の店と共同らしい、明確に看板で手前と奥と駐車スペースを分けていた。私は車を降りる前に看板の文字に思い浮かべて首をひねる、壁に書かれた文字と店名は異なる名称であったのだ。壁の文字は装飾なのだろうか、紀藤香澄は思う。潰れて別の店に変わっているのかも。そうだとしても、次の目的地をこの雑誌で探せばいい。思い悩むな、能動的に動くと決めたのだ。当たって砕けろだ。うん?だからフェニックス、死んでも灰の中から蘇る、ギリシャ神話の?デジタル表示のゾロ目で喜ぶくらい、くだらない発想だ。でも、前の私よりはマシだと、彼女は思い返す。暑くなったハンドルから手を離し、店に入った。