コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

店長はアイス 恐怖の源5-3

 店を出て右に曲がった。こちらはビーチへと向かう路。交通量の少ない十字路を信号機が監視員のように目を光らせていた。飲食店、敷地の半分以上が駐車場として利用されている。横断歩道を渡り木材を切断する音が建物からもれ聞こえる。その先は緩やかに右にカーブ、高木の街路樹、白樺の葉が大きく緑を広げていた。今日は曇り空なのであまり役にはたっていない。線路を渡る、電車をやり過ごして美弥都は十字路に行き着いた。国道に出た、青い看板が大まかな行き先を白の矢印で案内。立体交差付近で携帯のアラームが鳴った。時間切れである。偶然にも左へ曲がるところであった。
 引き返すと決めたら雨が降り出した。フードを被り雨を凌ぐ。車で来店するお客は雨を嫌う傾向があると思い出す。短時間でどこへでもいけてしまう便利さを自らの能力に組み込んで過度に自信を持ってしまうのだ。単なる癇癪なのに、黙っていれば収まるのに天気すらコントロール下におきたいらしい。歩きは自然と雨に優しくなれる。諦められる。だって、もともと自分の体しか動かせないと知れるのだから。途中、バス停の待合室で煙草を吸った。たまらなく、「おいしい」と感じるのは我慢のおかげ。運転手もたまには歩いてみるといいだろう。便利さで見えなかった事象が見えるから。
 バスが止まる、私が乗るのだと思ったらしい。手を振って合図を送る。バスはのっそりと待合室の狭い視界を横に流れていった。