コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応3-2

「ハァ、なかなかどうしてこればっかりは」相田は膨らんだ腹部をさする。
「体重を減らせばおのずと表面積も減る、汗の量も減少する」
「今日は厳しいですね」
「そうか?事件だから気を引き締めているのかもな」
「被害者の自宅の様子を聞きましたけど、なんだか虚しいですね。勝手な感想ですが」
「めずらしく神妙だな」
「ドレスはかなりハードですよ。未使用なら式で着るつもりで購入したのでしょう、しかし、披露する機会には恵まれずにしまわれていた。勤め先の店長と過去に付き合いがあったようです。店長の口から聞きました」
「うん」
 相田は頭を無造作に掻く。「自殺の可能性が高い、私はそう思います」相田の足が一歩力強く前に踏み出る。
「思い込みの意見は取り上げない」彼は入れ込んでいる。これほど、正義感に満ちた性格、思想、人格の持ち主であっただろうか。相田の心理の揺れ動きは捜査を迅速かつ取りこぼしなく解決へ導くには大きなウエイトを占める。私を含めて捜査員は四人、一人の離脱が大幅なほか三人への余分な負担に強いることになる。クールな振る舞いはデフォルトではなかったのか。
「状況がすべてを語ってくれます」熊田に紀藤香澄は他殺であり、動機が十分な勤務先の店長股代修斗を殺害の犯人であると彼は決め付けている。
「その店長も捜査対象の一人という位置づけだ」
「店長ですよ、絶対。彼は既婚者です。被害者に結婚をほのめかしておいて、決断を迫られると踏ん切りがつかなくなった。それでやむなく手をかけた。自殺に見せかけて」
「自殺とは言い難いよ、現場の様子をお前も聞いただろう」熊田は眉を器用に両目から額に近づける。
「ええ」
「だったら、その判断はまだ口するべきではない」
「ですが……」
「女性に深く加担、同情を見出す捜査を正等だとはいえない。あくまでも事実に基く考察によってのみ行動が決定される」