コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応3-3

「熊田さんはいつも思いつきで動かれているように私からは見えます。理路整然と説明がされないままで、捜査に出る事だってあったはずです。いいえ、あなたは多くを語らない。内にしまう推論に私が行き着いた考えも示されている」
「ああ。けれど、誰にも私は言わない。わからないとか、知らない、唸るだけでごまかす。お前ははっきりとその事実、示され、導いた論理の確証なしに、さも正解であるかのように振る舞い、押し付けて捜査をかき乱しかねない。今はまだ世間話の範囲内でも、これ以上の主張、要求は上司としての権限を行使する」喫煙スペース中央に陣取る灰と吸殻、煙を処理する機械が唸り声を上げる。二人の時が見つめあう視線によって動きを止めてしまう。熊田の煙草が指先で灰になりかけていた。
「もしよかった、一本あたりが出たのでぇ、二人でじゃんけんをして……、もらって、……僕が今年初の当たりの幸運を……分けましょう、って雰囲気ではないですね。失礼しました。また後ほど、ええ煙草ぐらいは我慢できますで」ドアを恭しく閉める鈴木に、熊田と見合った相田が言う。
「入れよ、煙草はここでしか吸えない。わざわざ外まで行ったら種田に厭味を言われる」
「いやあ、良く考えると僕、そんなに吸いたくなかったかもと思い始めて……」相田は見せた事のないくらい顔を鈴木を差し向ける。「はい、入ります。吸います。どちらか、よかったら、その、ね、糖分を吸収して、気分を落ち付かせるって言うものありかなぁ、ははははっ、なあんて思ったりして。はい、黙ります」いたたまれない空間は人が動物であると判らせてくれる。言葉がなくて、互いの距離が一定を保ち、にらみ合う姿は命をかけた生存競争そのものである。鈴木は背中に冷たい汗を掻いた。つっーと、一筋が背中をつたっていく。
「紀藤香澄の身辺から必ず彼女が殺された事実が発見される。私は確信をもってそう断言できます」
「誰も、きいていない。なんどもいわせるな」熊田は指先に残ったフィルターを、ステンレスの隙間に投函すると、もう一本に火をつけた。「鈴木は吸わないのか?」
「あっ、はい。吸います」当たりのコーヒーを置く場所を熊田の前かそれとも相田の方かと戸惑う鈴木は、迷った挙句、スーツのポケットに入れて煙草を吸った。