コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応4-3

「疲れたでしょう、働きづめだもんね。いいんだ、みんなも了解している」

「そういうことではなくて、疲れてはいますが、この時間から切り上げても一日の休みと数えられるのかと聞いているのです」多少口調が強くなったように思う。店内のお客はレジから離れた場所にいる。空の籠を持っているから、私の声は届いていないはずだ。たぶん。

「紀藤さん、大人気ないよ。林道さんも急病で熱が出たらしいし、わざとじゃない。病気は誰にだって起こりうる、その都度文句を言って仕方がない。人が減ったときこそ、力をあわせて仕事をこなすべきなんじゃないのかな。君はもっと仕事にストイックだと思っていたよ」

「私はこれまで一度も休んでいません」

「わからないかな。絶対とは言い切れないって言っているんだ」店長の怒声にお客が動きが止まる。かすかに店内に流れる音楽が姿を見せた。

 林道が倉庫から二人のやり取りを聞きつけてやってきた。「店長」小声で林道が言う。「倉庫まで筒抜けですよ。お客さんにも聞こえていますよ」そして林道は顎を引いた私にも言う。「あの、来週私が紀藤さんの代わりに出ます。今週の反対です、これだったら、どうです。私の休みは火曜ですしね、そうしましょう」林道は私の節くれだった手を握る。冷たい細長く白い手で包まれた。可愛いといわれ続けて育った顔で彼女は私を押さえ込んだ。心が押し込まれていく。尖っていたのに、ヤスリで磨いていたのに、拒んで侵入を許さなかったのに。凹凸が丸みを帯びてだんだんと球状に形を変える。

 股代が私の顔を覗く。「林道さんの提案に乗ってくれる?紀藤さん」

「はい、それはもう。……不満はありません」

「良かったぁ。私、紀藤さんに嫌われているのかと思っていました」彼女は胸の前にクロスした掌を銅像みたいにひきつけた。アピールにも見えたけど、彼女の生まれ持った備わった感覚とも思えたので良しとした。