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店長はアイス  過剰反応6-8

 彼女の死に関わりたかった?もしくは、憧れていたからか。
 大嶋の一方的な求愛の末路に彼女の死が選ばれた?
 本の所有については、彼女の周囲に近づけば情報を手に入れられる。非合法に手を染めない合法的な業者に依頼してもいい、時間と費用が十分ならの話だ。
 これらはあくまでも種田の見解を元にした一つの考えである。
 短くなった煙草を吸う。コーヒーの甘さに陶酔。糖の急激な摂取で一時的な過剰反応だ。いつものこと。甘いものなど、もう数ヶ月も口していない熊田である。
「偶然かぁ……」鈴木は煙でドーナッツのリングを空間、天井に向けて放つ。
「今日はいつにもまして機嫌が悪いなあ」相田がぼやく。
「熊田さん」鈴木が言う。「紀藤香澄は他殺、彼女はベンチに座っていた、または座らされていた。現場を調べてもその場で殺害、犯行に及んだ形跡はありませんでしたよね?つまり、彼女は自分の意思に関わらず連れてこられた、別の場所で殺害されてから」
「何が言いたい?」相田が苦い顔で言う。
「考えても見てくださいよ。犯人は見つかることを前提としてあの場所に死体をおいたんです」
「それで?」
「ですから、大嶋八郎が犯人から除外される」
「飛躍しすぎだ。なぜ彼女が店に忘れたとされる本と同様の形状のものを置く必要がある?」
「死んだ後もその後の世界に連れて行けるようにか?」壁に寄りかかる熊田が体重を両足に戻す。煙草を灰皿に押し付けた。
「ストーカーまがいに彼女の私生活に興味を持っていたなら、彼女がこれから一人で生きていく初めての世界に餞別を捧げたい、そう思ったのかも」
「生まれ変われもしないし、死後の世界もないよ。今がすべてだ。そんな世界を知っている人に出会ったためしがないから、受け継がれる世界の話はどこかで信じている現実の自分が半分は作り出している」