コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応7-2

 私はおかしいのだろうか、大嶋八郎は、駅に直結するショッピングモールまでの連絡通路を歩く。左右のガラスは窓がなく、さらに空間の空気は生暖かい。夜になっても微熱が続いているみたいだ。冷めない熱。放熱すれば朦朧さを味わえない、そう思うと冷水を浴びる気にはなれない。まだまだ現実の間で漂っていたい。
 考え事のせいで歩行速度が落ちていた、私は駅から吐き出された乗客の最後尾に躍り出ていたのだ。左に曲がると、ショッピングモールであるが、もう中に入れない、閉店の時間だ。人々はモール内には入らずに、階段で地上に降りる。足は正面の突き当りを目指した。通常のルートを外れた。選択はいつだって可能なのだ。たとえ帰り道だって、私は選んで家につける。最短距離は最善のルートにいつから躍り出たのか。二百メートルほど直進、重たい外の景色が丸見えのドア。海に近づいたおかげで微風が肌をつたう、それでも涼しさはまったくない。ドアの向こうの陸橋を歩く。橋は信号機のない道路を渡るために左右にそれに正面に道が続く。下はヘッドライトの明かり、大島八郎は直進を選択。この先は例の場所だ、死体が寝ていた場所。幅の狭い陸橋の階段を降りる。下を覗けばベンチが見える位置だ。周囲は車が通過するだけで人は歩いてはいない。まだ外へ出歩き夜の海を歩く陽気な人種は現れないはずだ。
 高台をさらに降りた。まだテープが張られている。近づいて誰もいないベンチに焦点をあわせた。そこに人がいたことを、あの朝を思い出してみる。はたして、本当にあれは現実だったのかと、今になって疑いを持った。触れてもいない、まして心臓の鼓動を確かめてもいない。瞬間的に近距離の彼女が生きているそれとは異質の気配のなさを感じたのだった。慌てて人を呼ぶ前に生死を確かめる対応が求められていたのかもしれない。しかし、振り返っても戻れはしないのだ。悔やんでも過去のこと。また呼び出さない、呼び出せないようにしっかりと記憶に蓋をする。